スポーツ医学・健康管理陰部・股間の保護

転倒による女性器のケガ、運動器具で女性器が裂ける症例【アクティビティ】

運動で転倒して地面に女性器をぶつけたり、運動器具が女性器に強く当たると、摩擦や衝撃で外陰部に腫れや痛みが生じることがあります。特にスケートやロープにまたがって股間を強打することがあります。腫れが強い・痛みが持続する・出血やしこりを伴う場合は外傷や感染の可能性があります。

運動器具と股間強打

女子がスポーツやアクティビティに参加すると、転倒して股間を強打したり、運動器具が外陰部に強く当たり、外陰部(女性器、vulva)に腫れや内出血、痛みを生じることがあります。

自転車サドルやジム器具による股間強打、スケートや遊具での転倒、衝突は特に多い要因です(Figure 1)。

多くは軽度の打撲で、冷却や安静により数日で改善しますが、腫れが大きい、痛みが長引く、出血やしこりがある場合は血腫や感染、尿道損傷などが疑われるため注意が必要です。特に小児や若年女性では組織が繊細で、症状を軽視すると回復が遅れることがあります。異常が続く場合は早めに婦人科や外科を受診し、適切な処置を受けることが望まれます。

Figure 1 : 尻を強打して立てない例

女性は自らの女性器を保護するため、このようなアクティビティを行う前に必ず転倒する練習(受け身練習)をしたほうが良いです。

現代的スポーツにおける女子の股間強打の例

自転車による股間強打事故の例

スノーボード外陰部外傷

ウォータースポーツ(水流損傷)

アクティビティで女性器が裂ける症例

アクティビティ、スポーツ活動によって女性器が裂ける症例が報告されています。強い衝撃や擦過、器具との接触が女性器(外陰部や膣口)に加わることで、外陰部裂傷や血腫を生じることがあります。特に不適切な防具使用や転倒時に発生しやすく、損傷時は出血や疼痛がみられ、感染防止と縫合などの外科的処置が必要な場合もあります。

インラインスケートの症例

インラインスケートによる股間強打

インラインスケート(ローラーブレード、inline skating)は、靴底の中央に車輪(wheel)が一列に並んで付いているローラースポーツ用の靴、またはそれを使ったスポーツのことです。一般的なローラースケート(車輪が左右二列に配置されたタイプ、Roller Skating)と異なり、直線的に並んだ車輪によってスピードが出やすく、氷上のスケートに近い滑走感覚が得られます。

通常は女性がスケートをしている最中に転倒した場合、尻や腰を強打することはあっても女性器が直接地面に衝突する可能性は低いです(Figure 23)。

Figure 2 : 後ろに倒れた場合、女性器は正面を向くので通常は地面に直接触れることは無い。
Figure 3 : インラインスケートで転倒しているイメージ(Girl Falling Roller Skating)。膝を曲げていれば女性器を強打することは無い。

しかし、女子の場合、脚を開いた状態で尻を強打することによって、大陰唇を地面にぶつけて損傷することがあります(Figure 45)。

Figure 4 : インラインスケートでバランスを崩して膣と肛門を強打する様子。尻を突き出してはいけないこと、膝を曲げて重心を低くすることが大事と強調している。

ドイツの症例(2002年)

ドイツのカッセル病院小児科・児童保護センターは、2002年(平成14年)にインラインスケートによる事故で女児に重大な性器損傷を負った症例を報告しました。

参考リンク

Genital injuries in prepubertal girls from inline skating accidents(インラインスケート事故による思春期前の少女の性器損傷)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12165615/
https://www.researchgate.net/publication/11220510_Genital_Injuries_in_Prepubertal_Girls_From_Inline_Skating_Accidents
Bernhard Herrmann, James Crawford. Pediatrics. 2002 Aug;110(2 Pt 1):e16.

Figure 5 : インラインスケートを装着している女子のイメージ。女子は転倒時開脚してしまうことがある。

8歳の女児がインラインスケート中に転倒し、両脚が急速に外転し、「開脚型」の衝撃を受けました。女児は転倒後すぐに痛みと出血に気づきました。事故は6歳の姉と7歳のいとこに目撃されました。この証言により児童性的虐待の可能性が否定されました。

  • 応急処置~搬送:女児の祖母が清潔な布で軽く圧迫し、安静にすることで出血は止まり、当初は医療機関を受診しなかった。翌日、出血が再発し、肛門性器部に不快感が残り、排尿時に中等度の痛みがあったため、母親は事故から24時間後に女児を小児病院の救急外来に連れて行った。
  • 症状:検査の結果、肛門縁から会陰にかけての深い正中裂傷と、会陰から右下大陰唇、そして舟状窩に至る広範な血腫が明らかになった。血腫は処女膜に達し、処女膜上にいくつかの点状出血を引き起こした。処女膜自体はそれ以上損傷していなかった(Figure 6)。
  • 手術:女児は損傷の修復手術を受けた。術中の肛門括約筋および膣の検査では異常はなかった。少女は4週間以内に2回の経過観察を受け、合併症なく治癒した。
Figure 6 : 論文掲載画像。8歳女児インラインスケート事故による正中線分離損傷。Midline splitting injury from inline skating accident 8-year-old girl.

ロープスイングの症例

ロープスイングによる股間強打

リバーツリーロープスイングRTRS: River tree rope swingsFigure 7)は、内陸の湖や川沿いの木にロープを取り付けて作られたスイング(ブランコ)です。主に自然の中、例えば川岸の木の枝にロープを結び、そこからぶら下がって川に飛び込んだり、ぶら下がって遊んだりするタイプのアクティビティです。

Figure 7 : リバーツリーロープスイング(RTRS)の例。

RTRS損傷は誤った飛び込み方法によって発生します。ロープには滑り止めの結び目Figure 8)がありますが、ロープのまたがり方と手の離し方を間違えると落下して、結び目に女性器が衝突して外陰部損傷が発生することがあります。

Figure 8 : リバーツリーロープスイング(RTRS)の手または脚のグリップとなる結び目。

アメリカの症例(2015年)

アメリカ、セントルイスのワシントン大学医学部小児・思春期婦人科は、2015年(平成27年)に、ロープスイングの使用により、若い女性に陰唇の裂傷と剥離、そして外陰部の大きな血腫を伴う重大な性器の傷害が発生した事例を報告しました。

13歳の女性が水着着用でロープに足を巻き付け、ロープを滑り降り、ハンドグリップまたはフットグリップとしての結び目に女性器が当たり広範囲の性器損傷が発生しました。ロープの凹凸のある表面が会陰部の軟部組織を切断しました。ヘリコプターで救急搬送され、麻酔下での診察が迅速に行われました。

  • 症状:陰核包皮の外側から恥骨結合まで達し、左大陰唇を貫通して小陰唇を剥離し、直腸粘膜と肛門括約筋を貫通して直腸周囲腔にまで達する裂傷が確認された(損傷の長さ:15cm、深さ:7cm)。
  • 手術:出産における第4度会陰裂傷の修復と同様に、直腸裂傷および直腸括約筋を縫合した。肛門直腸修復術中は圧迫を継続していたにもかかわらず、膣周囲の裂傷部は著しい出血を示していた。その後、直腸膣検査を実施し、括約筋の緊張と粘膜の修復が良好であることが確認された。修復術終了時には出血が最小限であったことが確認された(Figure 9)。
  • 手術後:術後2日目に退院し、厳格な会陰衛生指導を受けた。さらに、膣の安静を重視した活動の制限と、股を開く活動(サイクリングなど)を避けるよう指導された。
Figure 9 : 論文掲載画像。修復手術直後、多層閉鎖。Post-Operative Repair, Multilayer closure.

術後4週と8週の診察では、患者の回復は順調で、排便コントロールができたと報告されました(Figure 10)。術後1年で、患者の外陰部・膣および直腸領域は良好に治癒し(Figure 11)、排便コントロールは維持されていましたが、排便とタンポン挿入に困難と痛みを感じていました。

参考リンク

Rope swing injuries resulting in vulvar trauma(ロープスイングによる外陰部外傷)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25444055/
Hoefgen HR, Merritt DF. J Pediatr Adolesc Gynecol. 2015 Feb;28(1):e13-e15.

Figure 10 : 論文掲載画像。術後4週間。Four weeks post-operative
Figure 11 : 論文掲載画像。術後15ヶ月。15 months post-operative
タイトルとURLをコピーしました