スポーツ医学・健康管理陰部・股間の保護

高圧水流による外陰部損傷(膣内注入損傷)の事故を防ぐ方法【マンコ水圧損傷】

公園の噴水、プール、ウォータースライダー、高圧水流では、水圧が女子の陰部に集中しやすく、特に夏になると水圧による膣や外陰部の損傷事故が発生します。高速度・高圧の水流で膣や会陰部に直接衝撃が加わると深刻な裂傷や出血、場合によっては臓器損傷が起きることがあります。

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水圧による外陰部損傷の種類

水圧によって女性の陰部が損傷する事例には主に3種類あります。

  • 高圧水流の直撃(外陰部損傷)
  • 水の膣内注入、直腸侵入(臓器損傷)
  • 排水の吸引による損傷

高圧水流の直撃

女性の股間(まんこ)は、噴水やウォータースライダーなどによる高圧水流を受けるとエネルギーが集中しやすく、外陰部が直接ダメージを受けることがあります(後述)。

高圧水流は狭い面積に強い力を与える性質があり、硬い物体が高速でぶつかるのと同じ衝撃があります(これを「マン的」という)。陰部の柔らかい粘膜にあたると、血管が切れて外陰部血腫または裂傷となります。特にクリトリスに直撃すると鋭い痛みを生じます。

さらに強い力が加わると、陰部がえぐれて損傷するだけでなく、肛門(直腸)や尿道(膀胱)などの周囲の器官を損傷する可能性があります。

水の膣内注入(臓器損傷)

女子の外陰部には開口部が多くありますが、通常の水圧であれば、大陰唇・肛門・尿道口付近にある筋肉(括約筋)によってブロックされるため、大量の水が入ることはありません。

しかし、高圧によって開口部が開き、水流が膣口を突破すると、膣内に大量の水が入り込み、膣の壁が裂けたり破れたりし、子宮を破裂させます。子宮が破裂すると妊娠は不可能となります。同様に、水流が肛門を突破すると直腸を破裂させます(Figure 1)。

また、高圧の水流はタンポンや水着を膣内に押し込むリスクがあります。

Figure 1 : Force vector of water(水の力のベクトル)膣圧よりも直腸の圧のほうが低いので、一般的には膣よりも直腸のほうが損傷しやすいと言われている。

排水の吸引による損傷

排水口から大量の排水をする際に、排水口に外陰部や直腸が引き込まれると吸引圧(陰圧)がかかり、外陰部が引き裂かれることがあります。女性器は柔らかいため吸着しやすく、裂傷だけでなく、内臓脱出(Evisceration)も起こる可能性があります(Figure 2)。

Figure 2 : プールの排水口が壊れている(蓋が外れている)と、吸引圧により身体が引き込まれる。とくに女性器は吸着されやすい形状である。

女性の陰部に水が入り込む理由

亀裂に水が入る性質

女性の股間にはもともと陰裂(大陰唇の割れ目、Genital cleft)と呼ばれる亀裂があるのでそこから水が侵入して裂けることがあります(Figure 3)。

成人女性の大陰唇や膣は、普段からタンポンなどを膣内に挿入することがあるだけでなく、勃起した硬いペニスを挿入することもありえるため、その太さ程度(直径数cm程度)には広がりやすくなっています。

Figure 3 : 女性の股間には「陰裂(Genital cleft)」と呼ばれる左右大陰唇の膨らみによってできる亀裂があり、水が入り込みやすい構造である。

凹みに水が溜まりやすい

女性の股間はV字型に近い構造のため、物理学的(流体力学)に水流を引き寄せる性質があります。これは、V字型に入った湾の津波が高くなるメカニズムと同じです。

女性の太ももの間に水流が押し寄せると、凹みの最深部にあたる大陰唇の割れ目(陰裂)にエネルギーが集中しやすくなります。⁠強い水流を受けると、水は太ももに挟まれて股間から逃げ場を失って溜まるため、膣口や尿道口に圧力が集中しますFigure 4)。

また、女子の股間には、男性のペニス(Penis或いはTinko)のように突出した物がついていないため、水流が分散せず守られにくい構造となっています。

Figure 4 : 女性の股間はV字型であり奥に向かって水流のエネルギーが集中する。外陰部が水流の運動エネルギーを受け止めている。

開口している

女性の外陰部(特に膣口)は柔らかい粘膜でできているため、通常は閉じていても水圧のような強い外力がかかると、粘膜が変形し、わずかに開きやすくなります。膣が開くと水が内部に入り込みやすくなります(Figure 5)。

Figure 5 : 女性器の基本的な構造。陰唇と膣口は強い外圧を受けると開きやすくなり、水が内部に浸入する。

動水圧と静水圧

水流のような流体の圧力には、流れる方向に関係のない静圧(静水圧Static pressure)と、流れてくる水の塊を真正面から受けた場合のエネルギーを表す動圧(動水圧Dynamic pressure)があります(Figure 6)。高圧洗浄機・ビデ・シャワーで計測できる水圧(製品の設計として表示される吐出圧)は配管やノズル内の静水圧ですが、実際の人体への影響は動水圧(衝撃圧力)によります。

Figure 6 : 水流の静水圧と動水圧の模式図。規格は静水圧で表示されるが、実際の衝撃は動水圧=運動エネルギーで表される。
  • 静水圧:もともと持っている水の圧力、方向は無関係
  • 動水圧:水の動きによる圧力で、正面で受けたときの衝突エネルギー

高圧水流が外陰部に直接あたった場合、静水圧と動水圧を加えたエネルギー(主に動水圧)が加わります。これに対して、外陰部に当たった後で体内に水が浸入したときの臓器破裂の危険性は、水流の方向は関係ないので、静水圧で考えます(Figure 7)。

Figure 7 : 動水圧は外陰部に直撃した時のエネルギーであり、その力によって内部の臓器に水が浸入した場合に破裂する危険性があるかどうかは臓器内の「静水圧」の大きさによる。

マンコ損傷水圧(目安)

水圧は、血圧で使われる単位(mmHg)またはキロパスカル(kPa)で表すこととします。1kPa = 10hPa = 約7.5mmHgです。

外陰部に直接損傷を与える動水圧

流体の密度をρ [kg/m3]、流速をv [m/s] とすると、動圧P [Pa] は次の式によって求められます(水の密度は約1000kg/m3)。動水圧(P)は運動エネルギーを圧力に換算したもので、水の速度(v)の2乗に比例します。同じ静水圧(吐出圧)でも、水の勢い(流速)を減らせば動水圧も減ります。

家庭用ビデやシャワーなどは動水圧が最高でも50kPa(350mmHg程度)未満になるように設計され、安全設計のもとで使用すれば粘膜裂傷のリスクは非常に低いとされます(後述)。約100kPa(750mmHg)を超えると粘膜損傷、表面的な炎症、小さな出血の可能性があります。

動水圧(目安)外陰部の外傷
100kPa(750mmHg)粘膜の炎症、小さな出血(スプリンクラー)
400kPa(3000mmHg)外陰部裂傷(高圧洗浄機)
450kPa(3375mmHg)粘膜以外の皮膚の損傷
500kPa(3750mmHg)深い裂傷、組織破壊
550kPa(4125mmHg)深刻な傷害(水上スキーのノズル噴射)
690kPa(5175mmHg)穿孔・重大損傷

膣内に水が浸入する動水圧

大陰唇は通常閉じた状態ですが、膣に力を入れていない限り、外部からの軽い圧力で簡単に開きます。シャワー・入浴時、または水中で脚を開いた状態では外陰部の保護が弱まり、水が膣内に流れ込むことがあります。水が自然に膣内にしみこむ場合、約6.7kPa(50mmHg)程度の動水圧でも十分です(成人女性の通常の膣圧は約2〜4kPa)。ただし、そのまま水が留まることはなく外に排水されます。

動水圧(目安)膣内浸入
約6.7~20kPa(50~150mmHg)通常の膣内への水の浸入
20~67kPa(150~500mmHg)強制的に圧力をかけた注入で膣壁が伸びる

水が排出されないまま外部から強制的に水が入り続けると、風船のように急激に内圧(静水圧)が上がり破裂する危険があります。

外陰部に直接損傷を与える動水圧 > 膣内に水が浸入する動水圧

100kPaの動水圧で膣内に大量の水が入り込む危険があることから、前述の外陰部直撃による損傷よりも、膣内に水が強制的に侵入することによる損傷のほうが発生しやすいということになります(=つまり、女性器を適切に保護して水が入らないようにすれば膣内損傷の発生確率を減らすことができる)。

排水口に外陰部が吸い込まれる吸引圧

プールやジャグジー、浴槽の排水口で陰部が吸い込まれ、裂傷・膣穿孔・子宮脱などを起こした事故が複数報告されています。女性の股間は排水口に吸われると隙間なく密着し、真空状態を作り、くっついてしまいます。

水が勢いよく排水されるときに引き込まれる力を「吸引圧」といい、動圧の反対なのでマイナスで表します。

吸引圧(目安)外陰部の外傷
-13kPa(-100mmHg)内出血、表皮剥離の可能性(家庭用掃除機)
-27kPa(-200mmHg)外陰部・膣の粘膜にうっ血、裂傷のリスク(ダイソンの掃除機)
-67kPa(-500mmHg)組織の壊死、内臓脱出の可能性(排水口事故)

高圧水流による外陰部損傷の症例

ウォータースポーツ

⽔上オートバイ(⽔上スキー、Personal watercraftPWC)のウォータージェット推進装置から噴き出されるノズル噴射は550kPa(4125mmHg)を超える動水圧がかかり、生命を脅かすような内臓ダメージに至る可能性があります。

女性の外陰部の開口部から高圧水が入ると膣損傷、直腸損傷の危険性があります(Figure 8)。日本でも、⽔上オートバイから落水した際にジェット水流が股間に直撃し直腸裂傷、後腹膜気腫、縦隔気腫にまで至った20歳女性の症例が報告されています。

Figure 8 : 女性の小陰唇内部の開口部。開口部に強制的に水が入る危険性があるだけでなく、開口部が「ふさがる」ことによる危険もある。

注:女性の外陰部は開口部が多いことを忘れてはいけません。特に、女性はウェットスーツを着用するなどの予防措置をすれば女性器の損傷を防ぐことができます

44歳女性、水上スキー事故

水上スポーツの高圧水流により膣裂傷を受け、緊急手術が必要となった事例です。

  • 状況:44歳女性が湖で水上スキーをしていた際、曲がり角に差し掛かった際にコントロールを失い転倒。脚を大きく開いた状態で水面に激突した。標準的なワンピース水着を着用していた。水面激突時に背中の痛みを感じ、股間にジェット水流が直撃して膣から著しい出血があった。
  • 症状:左膣壁の重度の裂傷(子宮頸部の左縁から左膣壁まで延びる6cmの裂傷)、出血多量
  • 手術:緊急手術室で膣裂傷の縫合手術。翌日には出血が止まった。術後1日で退院し、6週間後の経過観察時には経過良好であった。
参考リンク

Water-Related Vaginal Injury: A Case Report and Review of the Literature(水に関連する膣損傷:症例報告と文献レビュー)
Isabelle Gauthier, Aisling A. Clancy, Jennifer Lipson, Dante Pascali
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1701216317308149
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29921429/
July 2018 Journal of Obstetrics and Gynaecology Canada 40(7):926-930

ウォータースライダー

ウォータースライダーWater slide)では、頭や⾸の怪我を防ぐため、頭から⼊るのは通常禁⽌されています。女性の場合は、ケガのリスクの他に水着が脱げるリスクも考慮する必要があります。

女性器の外傷を防ぐために、足首を重ねて脚を交差させたり、脚を揃えたりすることが賢明です。どれだけ低速であっても、腕、脚、マンコを広げてはいけません。

ウォータースライダーによる裂傷(38歳女性)

  • 状況:38歳女性が、急勾配の高速ウォータースライダー(Figure 9)を滑り降りている最中に、水が体内に流れ込み、膣内に8cmの裂傷を負った。腕と足を組むように言われ、そのようにしたがパンツが食い込むほどの水圧で膣内に水が浸入した。
  • 症状:8cmの膣内裂傷、強烈な痛み、股間からの出血
  • 手術:硬膜外麻酔を受け、8センチの裂傷を縫合された。病院で24時間過ごし退院。

急勾配の高速スライダーは水の塊に衝突するのと同じですから、次の事例のように、脚を閉じていても膣内に水が浸入することがあります。

Figure 9 : 事故現場のウォータースライダー「ザ・グリーン・バーティゴー」(スペイン) the green VertiGO slide at the Aqualandia water park in BenidormCredit: Aqualandia Benidorm
参考リンク

‘BLOOD WAS POURING’ Brit mum has insides ‘ripped apart’ freefalling down 110ft slide at Benidorm water park where another UK holidaymaker was paralysed(「血が流れていた」ベニドルムのウォーターパークで、イギリス人の母親が110フィートの滑り台から自由落下し、内臓が「引き裂かれた」。別のイギリス人観光客も麻痺した。)
https://www.thesun.co.uk/news/9851239/brit-mum-vagina-ripped-open-benidorm-water-park-holidaymaker-paralysed/

噴水の直撃例

噴水の事故では、膣の奥にある膣円蓋(ちつえんがい、Vaginal fornixFigure 10)を裂傷する事例が多いです。膣円蓋はAスポット(A-spot)とも呼ばれ、子宮の入り口に当たり、ペニス(Penis或いはTinko)の亀頭で圧迫すると女性が感じる性感帯です。

Figure 10 : 膣円蓋は子宮の入り口にあり、ペニスのピストン運動(グラインド運動)によって感じる性感帯である。

4歳女児の股間に噴水直撃

  • 状況:2016年6月26日午後1時ごろ、4歳女児(身長102cm、体重16kg)が大阪市西区の靱(うつぼ)公園内にある人工池の噴水(立入禁止の表示あり)で遊んでいたところ、水が噴出され外陰部に直撃した。
  • 症状:後膣円蓋裂傷(動脈性出血)
  • 手術:バイポーラーで焼却止血し、ピトレシンガーゼで圧迫止血した。出血の軽快傾向を確認し、ピトレシンガーゼを腟内に留置して終了した。経過良好で術後3日で退院。
参考リンク

Injury Alert 傷害速報 No. 64 女児の会陰部外傷(日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会)
https://www.jpeds.or.jp/modules/general/index.php?content_id=35
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/injuryalert/0064.pdf

9歳女児の股間に噴水直撃

  • 状況:9歳女児が公園の噴水から噴き出す高圧水の上に座った後、痛みと膣出血を起こした。
  • 症状:膣円蓋上部裂傷、750 mLの大量出血
  • 手術:全身麻酔下で縫合治療を受けた。
参考リンク

Vaginal laceration from a high-pressure water jet in a prepubescent girl(高圧水ジェットによる思春期前少女の膣裂傷)
https://journals.lww.com/pec-online/abstract/2007/02000/vaginal_laceration_from_a_high_pressure_water_jet.10.aspx
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17351412/
Pediatric Emergency Care 23(2):p 112-114, February 2007.

10歳女児ジャグジー噴出口による膣裂傷

  • 状況:10歳女児がジャグジースパの噴水ジェットを誤ってオンにした後、大量の膣出血を起こした。
  • 症状:後膣円蓋の3時から9時の方向に裂傷が発見された。
  • 手術:裂傷の修復が行われ、止血が得られた。短期間の観察の後、患者は退院した。
参考リンク

Vaginal Laceration Requiring Operative Repair as a Result of a Jacuzzi Water Jet in a Prepubertal Girl(ジャグジーの水流による膣裂傷で手術が必要となった思春期前女児)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1083318825001858
Journal of Pediatric and Adolescent Gynecology Volume 38, Issue 2, April 2025, Page 295

補足

トイレのビデは安全

トイレのウォシュレット(温水洗浄便座)のビデの噴射圧力は、動水圧換算でおおよそ2〜8kPa(15〜60mmHg)程度に抑えられています。一般的に粘膜に直接当てる場合は13kPa(100mmHg)以下が望ましいとされており、安全と言えます。

credit : LIXIL

シャワーオナニーの陰部接触圧

家庭用シャワーは200~500kPa(1500~3750mmHg)とされていますが、これは配管内の「静水圧」を計測した値です。⁠

シャワーヘッドから出る水は穴から出るときにエネルギーを消費するだけでなく、空気中に分散するため、皮膚に当たるときの動水圧(水が塊として衝突するエネルギー)はそれよりも相当低くなります(動水圧換算で13~50kPa、100~350mmHg程度と推定される)。ただし、外陰部や粘膜には動水圧13~50kPa(100~350mmHg)程度でも長時間かつ至近距離では炎症を引き起こす可能性があります。

女性はクリトリスや小陰唇は弱く刺激をすると性的快感の絶頂(オーガズムOrgasm)に達します。シャワーオナニー(マスターベーション)をするときにはできるだけ弱い水流で、一点に集中させずシャワーヘッドを揺らすなどして圧力を減らします。

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観音菩薩と水難事故

いっぱんに、裸の女性が両脚を開いて女性器を露出すること、または、左右の大陰唇を外側に開いて陰唇の中を見せることを「観音開き」または「ご開帳」と言います。両開きの扉(観音扉)の中に隠れていることから女性器を観音様(観音菩薩)として崇める信仰もあります。

仏教では観音菩薩は水の守護者、水難から救済する仏とされ、水が様々な形に変化するように、人々の苦しみや状況に応じて慈悲深く救済すると考えられています。海難事故、水難事故から身を守る神聖な存在ですから、女性の皆さんは海や川で遊ぶ前に、必ず全裸で脚を開いて秘仏を拝むようにしましょう。

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