スポーツ医学・健康管理陰部・股間の保護

女性の股間に水上オートバイ(水上バイク)のジェット噴射が直撃する危険性

水上オートバイ(水上バイク)のジェット噴射は、皮膚や粘膜を容易に破壊するほど強力です。Tバックやビキニなど水着が薄く、防護機能が不十分な場合、死亡事故につながるおそれがあります。医学的には、女性が股間を適切に防護すれば、外陰部に重大な障害を負うことはなく、少なくとも命を落とすことはないと言われています。

水上オートバイのノズル噴射

水上オートバイ(水上バイク)

水上オートバイは水の上を高速航行する小型船舶です。

水上オートバイは、「水上バイク」「水上スクーター」「ジェットスキー(Jet ski)」「ウォータースキー(Water ski)」と呼ばれることがあります。英語では「パーソナルウォータークラフトPersonal watercraftPWC)」と言いますが、「ジェットスキーイング(Jetskiing)」と言うこともあります。

重量は一般的な2人乗りモデルで200kg~400kg程度です。日本の法律上の正式名称は「特殊小型船舶(とくしゅこがたせんぱく)」で、操縦するには特殊小型船舶操縦士免許が必要です(船舶職員及び小型船舶操縦者法)。

ただし、免許を持っている人が操縦し、その後ろに乗るだけなら免許は不要です。

基本的に安全な乗り物です

水上オートバイの暴走が話題となっているために危険で迷惑な乗り物のイメージがありますが、安全に航行すれば、陸上のバイクよりも安全な乗り物です。

水上オートバイはレジャーだけでなく、警察や消防、海上保安庁などの沿岸警備の警備艇として使われ、最近ではボートやサーフィンなどの公式試合においても救助艇、ライフガード用として使用されています。免許を取得した人が通常の速度である20-40km/h程度で航行すれば安全な乗り物です(落水しても痛くない)。

暴走(珍走)をすればどんな乗り物でも危険です。

参考リンク

Surf Life Savers get new Sea-Doo GTI fleet ahead of summer(オーストラリア・サーフライフセーバーズ、夏に向けてジェットスキーSea-Doo GTIを14台導入して船団を結成、watercraftzone)
https://watercraftzone.com.au/seadoo-surf-life-saving-rescue-jet-ski-nov-2023/

ノズル噴射

水上オートバイは、モーターボートのような外部に露出した回転プロペラで進むのではなく「ノズル噴射式Water jetPump-jet)」です。

船底から水をくみ上げて、ジェットポンプで水を高圧にして、後方のノズル(Steering Nozzle)から噴射します。船体にはスポーツカー型の自動車と同じレベルのエンジン(通常1800cc、250馬力程度)が内蔵されており、フルスロットルで毎秒約150リットルのジェット水流が噴出されます。その威力は、スイカが瞬時に粉々になる、風呂の水が数秒でたまると言われています。

この強力なジェット水流によって時速90km~100kmまで急加速することができます。⁠ちなみに、免許取得時に時速40kmを超えると試験官に怒られるらしいです。プロのボートレース(競艇)でさえ平均時速が約60kmですから、素人が調子に乗って加速したら人身事故になるのは当たり前です。

「特殊小型船舶操縦士教本」(一般財団法人日本海洋レジャー安全・振興協会、株式会社舵社、平成30年4月発行)

女性の股間に噴射が直撃する事故

後ろの同乗者が落下する

陸上のバイクは同乗者は足をステップに置き、シートに深く座り、両手でしっかりとつかめる構造になっています。水上オートバイのシートは常に濡れており身体が固定されにくいため、急発進・急加速・急旋回で後ろの人はふり落とされやすくなります。⁠波やうねりの衝撃でによって不規則な縦揺れや横揺れが頻繁に起こり、同乗者は急にバランスを崩され、飛ばされやすくなります。

水上では、水しぶきや風の抵抗を直接受けるため、肌で感じるスピード感(体感速度、疾走感)が強くなります。水上の体感速度は「陸上の3倍」とも言われ、30km/hのスピードでも60~90km/hに感じることがあります。40km/hを超えると船体が波に乗って上下に大きく動くことがあり、同乗者に声をかけるなどしてうまく体重移動をしないと落水や転覆の恐れがあります。

女性の同乗者が落下しやすい理由

海水浴場や観光地では水上オートバイを貸し出して、免許を持った操縦者が後ろに女子を乗せて楽しむサービスが流行っています。

水上オートバイは脚を開いてまたがって乗るので、急に加速するか、急に曲がることによって後ろの人が振り落とされると、脚を開いたまま後ろに落下することになります。水上オートバイの後ろからは高圧水流が出ているため、落下した瞬間に女性の股間に直撃します。

特に女性は、振動する船体の上にまたがること(俗に騎乗位と呼ばれる体位)により、陰部神経が直接刺激され性的快感があるため、股間に力を入れられなくなるだけでなく、集中力が無くなり身体のバランスを崩しやすくなります。

女性の腕力を考えれば、発進・加速・旋回での体重移動の方法を知らない素人の女性を後ろに乗せて、海の風を受けながら時速40km以上出すのは「殺人行為」と言えます。

女性器の内部損傷

女性の外陰部は開口部が多いことを忘れてはいけません(尿道、膣、バルトリン腺、スキーン腺、肛門、その他の汗腺など)。陰唇が腫れると開口部がふさがります。

⽔上オートバイのノズル噴射は業務用の高圧洗浄機よりもはるかに強力です。550kPa(4125mmHg)を超える動水圧があり、女性器の割れ目を無理やりこじ開けて、膣や直腸の奥まで水を押し込み、さらに壁を貫通するほどの破壊力があります。

膣、直腸または肛門に重度の内部傷害を引き起こし、失血死することもあります。多くの場合、命を取り留めたとしても、緊急手術をする必要があり、長期の入院生活など不便な生活を強いられることになります。

⽔上スポーツ、高速水上アクティビティに参加する女児や⼥性は、ウェットスーツ(通常のウェットスーツで良い)のメリットを十分理解して、必ず着用するべきです。

女性は股間を保護しましょう

注意喚起はしつこくやっています

水上オートバイに乗る人は全員ライフジャケット(救命胴衣)の着用が法律で義務づけられていますが、残念ながら股間の保護は義務ではありません。罰則もありません。

しかし、水上オートバイの高圧水流は股間に当たると、生命を脅かすような内臓ダメージに至る可能性があります。そのため、性別を問わず、水上オートバイに乗船する際にはウェットスーツの厚めのボトムスを着用することが強く推奨されています。特に、後ろに乗る同乗者はジェット水流直撃のおそれがあるので通常の水着で乗ってはいけません。

⽔上オートバイの取扱説明書にも警告として記述されており、船体にも警告ラベルが貼ってあります。また、国土交通省運輸関連委員会からも注意喚起が出されています。講習の教本にも当然掲載されており、「知らなかった」「必要ないと思っていた」などという言い訳は絶対にウソです。

「通常の水着では身体を十分に保護できません。身体を保護できるウェットスーツパンツ等を必ず着用してください。」

股間をガードしない本当の理由

水上オートバイの製造元も、行政もしつこく注意喚起をしており、講習の教本にも載っているにもかかわらず、水上オートバイの事故で、後ろの女性同乗者がウェットスーツ等を着用していないのには「表に出ない理由」があると言われています。

あくまで噂ですが、ガードの堅い女性は後部座席に誘われないらしいです。ビキニ女子を狙う操縦者の後ろに乗るのは絶対にやめましょう。

  • 後部に乗る女子は初乗りが多く、ウェットスーツ等を用意していない(知識がない)
  • 水上オートバイの知識が無さそうなビキニ女子にウンチクを言って自慢したい(そんな女子にわざわざウェットスーツを着させるわけがない)
  • 楽しませると言いながら、故意に落水させてビキニを脱がす(ポロリを狙う)
  • 救助するふりをして女子の身体を触り放題
  • 初めからヤリモクで免許を取っている

水上オートバイ事故の症例

水上オートバイのジェット噴流により女性の股間が損傷する事故は多数報告されています。ここではその一部を抜粋します。

国内の死亡事故

国内の女性股間損傷の事例はすべて「女性が通常の水着を着ていた」のが原因であり、ウェットスーツなど股間を保護できる服を着用していれば女性器と尻の損傷を防ぐことは可能であったと言われています。

23歳女性死亡事故(兵庫)

  • 状況:2011年7月、兵庫県明石市松江海水浴場沖において、34歳男性操縦の3人乗り水上オートバイで、友人女性と被害女性(23歳)を乗せて約40km/hの速度から急加速させたところ、最後尾の被害女性が後方に倒れて落水。
  • 症状:ノズルから出た噴流が股間に直撃して、救急搬送されたが到着時には心肺停止状態で、病院で死亡が確認された。操縦者の男性は業務上過失致死容疑で送検。
  • 司法解剖を行った医師の見解:水上オートバイの噴流が下半身開口部から直腸に入り、直腸を破ってその外側の後腹膜腔と呼ばれる所に水が塊となって侵入して後腹膜腔の組織を潰し、左上臀動脈のほか、他の細かい動脈や静脈を切って出血して失血したことが直接の死因である。水着姿であったが、強い圧力が掛かった水の塊は、水着の生地を通り抜けて開口部から直腸に侵入した。通常の水着だと隙間ができ、その隙間から水が侵入するが、ウェットスーツのような密着するものを着用していれば、死亡に至ることはなかったと思われる。
参考リンク

船舶事故調査報告書 2011年7月31日発生、水上オートバイリブ同乗者死亡(運輸安全委員会 – 国土交通省)
https://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/ship/detail.php?id=4768
https://jtsb.mlit.go.jp/ship/rep-acci/2012/MA2012-9-26_2011kb0127.pdf

20歳女性死亡事故(山形)

  • 状況:2020年8月、山形県鶴岡市湯野浜海岸西方沖において、27歳男性操縦の3人乗り水上オートバイで女性2名を乗せて、旋回及びスラローム(蛇行)を繰り返しながら遊走を行い、旋回しながら徐々に加速して約70km/hの速力となったところで、海面をはねる船体振動等で同乗者2人の体勢が崩れ、後方へ落水した。同乗者2人はウェットスーツボトムなどジェット噴流から身体を保護できるタイプの衣服を着用していなかった
  • 症状:女性2人ともノズルから出た噴流が股間に直撃して救急搬送された。そのうち最後尾に乗っていた20歳女性は搬送時、意識不明の状態で、病院で死亡が確認された。死因は後腹膜出血と検案された。操縦者の男性は業務上過失致死容疑で書類送検、略式起訴。
参考リンク

船舶事故調査報告書 2020年8月2日発生、水上オートバイGP1800同乗者死亡(運輸安全委員会 – 国土交通省)
https://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/ship/detail.php?id=13920
https://jtsb.mlit.go.jp/ship/rep-acci/2022/MA2022-2-4_2020sd0032.pdf

国内の主な重傷の例

24歳女性保育士、直腸損傷等(大阪)

状況:2011年7月、大阪府阪南市の箱作海水浴場(愛称・ピチピチビーチ)の沖合において、自営業の47歳男性操縦の3人乗り水上オートバイで、沖合から砂浜に向けて急発進したため、座席にまたがった姿勢で乗船していた同乗者2人が後方に滑り落ちて落水。そのうち、最後尾に乗っていた24歳女性保育士の下半身に船尾の噴出口からの噴流が当たって負傷。救急車で大阪府泉佐野市の病院に搬送され、直腸損傷等と診断された(入院約1か月半)。

参考リンク

船舶事故調査報告書 2011年7月23日発生、水上オートバイフェアレディー同乗者負傷(運輸安全委員会 – 国土交通省)
https://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/ship/detail.php?id=4764
https://jtsb.mlit.go.jp/ship/rep-acci/2012/MA2012-9-22_2011kb0191.pdf

26歳女性、直腸損傷(琵琶湖)

状況:2018年9月、滋賀県長浜市二本松水泳場東方沖(琵琶湖北部)において、34歳男性操縦の3人乗り水上オートバイで、ウェットスーツボトム等を着用せずに水着と救命胴衣のみを着用した同乗者女性(27歳、26歳)を後部座席に乗せて帰航中、約60km/hの速力で波高約0.3mの航走波(船が通った後の波)を乗り越えたため、船体が上下に動揺し、一番後ろに座っていた同乗者が船尾方に落水し、船尾部のジェットノズルから放出されていた噴流を下半身開口部に受け、出血性ショック、直腸損傷等の重傷を負った(入院2か月半)。

参考リンク

船舶事故調査報告書 2018年9月2日発生、水上オートバイRXT-X260RS同乗者負傷(運輸安全委員会 – 国土交通省)
https://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/ship/detail.php?id=11189
https://jtsb.mlit.go.jp/ship/rep-acci/2019/MA2019-3-5_2019tk0006.pdf

27歳女性、直腸裂傷と膣裂傷(沖縄)

  • 状況:2014年8月、沖縄県で通常の水着を着用して水上オートバイの最後尾に最後尾に乗っていた27歳女性が、旋回中に振り落とされて海中に転落した。救助時に会陰部から出血を認め、当院緊急搬送となった。
  • 症状:膣周囲の血腫、膣円蓋部裂傷、肛門から約5cm奥の直腸に複数の裂傷、約2000mlの出血
  • 手術:膣からの出血に対しては縫合止血を試みたが、損傷部位が深く止血困難であった。緊急開腹で経カテーテル的動脈塞栓術(trans-catheter arterial embolizationTAE)により止血、S状結腸人工肛門を造設。術後35日目に自宅近くの医療機関へ転院。肛門括約筋機能に問題はなく人工肛門は閉鎖。
  • 執刀医の見解:ジェット水流が膣腔内に侵入して損傷を生じるという受傷機転を考えれば、膣入口部と膣円蓋部が損傷を受けやすいことは十分に予想される。主に若年女性が膣や直腸に損傷を負い、人工肛門造設など身体的・精神的に多大な苦痛を伴うものである。ウェットスーツ着用は本外傷に対する有効な予防法になりうると考えられる。本外傷の危険性と乗船時のウェットスーツ着用について注意喚起が必要である。
参考リンク

水上オートバイ事故による直腸・膣損傷の2例(日本臨床外科学会雑誌2016年77巻2号p.411-417)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/77/2/77_411/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/77/2/77_411/_pdf

20歳女性、外傷性直腸損傷と縦隔気腫(佐賀)

  • 状況:20歳女性が水上バイクの最後尾に乗船中、急旋回した際に落水した。女性はセパレート型の水着しか着用していなかった。その後2時間程度会陰部からの出血が持続し、気分不良となったため前医を受診。胸腹部CTにて肛門周囲から骨盤壁や腹部大動脈周囲、腎周囲の後腹膜と縦隔にまで広がる気腫と診断され、救急搬送された。
  • 症状:肛門部痛と気分不良を訴え、肛門部6時方向で背側と直腸内部にまで至る肛門直腸の断裂を確認。肛門は6時方向で全層断裂しており、直腸後壁にまで達していた。落水した際のウォータージェット推進装置から噴き出した水による直腸裂傷、後腹膜気腫、縦隔気腫と診断した。
  • 手術:緊急手術施行し、直腸裂傷部を縫合閉鎖、肛門括約筋と皮膚を再建。尾骨の腹側で頭側に広がる腔にドレーンを挿入、左上腹部に双孔式横行結腸人工肛門を造設した。術後4日目尿道カテーテルを抜去、致命的な合併症は無かったが、自排尿困難であり自己導尿を開始した。術後7日目後腹膜腔へのドレーンを抜去、膀胱直腸機能障害が改善しなかったために受傷後22日目、人工肛門形成で退院。
  • 後遺症:手術後も、排尿機能、肛門括約筋の機能が低下したままで、尿意はあるものの尿道内圧上昇と排尿筋収縮低下があることから交感神経系と副交感神経系が不完全に損傷を受けていると思われる。仙骨と直腸の間から直腸壁に沿った後腹膜腔が広範囲に剥離される形の損傷を受けており、骨盤神経叢の損傷が原因と推測される。膀胱直腸機能に重篤な後遺症が残る可能性がある。
参考リンク

水上バイクからの落水による外傷性直腸損傷から縦隔にまで広がる気腫にいたった1例(日本腹部救急医学会雑誌2014年34巻6号p.1159-1162)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaem/34/6/34_1159/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaem/34/6/34_1159/_pdf

海外の症例

女性が股間をガードをせずにジェット噴流を受けている例

性器破裂による死亡事故(ロシア)

ロシア人49歳女性が、52歳夫が操縦する高速ジェットスキーの後部から落水し、股間にジェット噴流が当たり、すぐに地元の病院に搬送されたが、性器破裂により死亡しました。夫は過失致死の罪で刑事告訴されました。

参考リンク

Wife dies of ‘genital rupture’ after falling off jet ski driven by husband(妻が夫の運転するジェットスキーから転落し「性器破裂」で死亡、New York Post
https://nypost.com/2024/01/03/news/russian-woman-dies-of-genital-rupture-after-falling-off-jet-ski/

20歳女性、後膣円蓋の腹腔内断裂

  • 状況:2020年7月、既往歴および手術歴のない20歳の患者が水上オートバイの後部から投げ出された。彼女はツーピースの水着を着用していた。
  • 症状:会陰出血と耐え難い膣痛
  • 手術:全身麻酔下の会陰検査では、複数の血栓を伴う膣円蓋の破壊および小腸の露出が指摘された。直腸子宮嚢前面の後膣円蓋の腹腔内断裂と診断され、膣を縫合し回復した。
後膣円蓋は膣の最奥、子宮の入り口です。この症例では、ジェット水流が膣の奥の壁を突き破って裂けたということです。
参考リンク

Water-Related Vaginal and Anorectal Injuries in Personal Watercraft (Jet Ski): Two Case Reports and Literature Review(パーソナルウォータークラフト(ジェットスキー)における水に関連した膣および肛門直腸損傷:2つの症例報告と文献レビュー)
https://www.hilarispublisher.com/open-access/waterrelated-vaginal-and-anorectal-injuries-in-personal-watercraft-jet-ski-two-case-reports-and-literature-review-78855.html

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