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女性の股間への急所攻撃「マン的」が本当に痛い理由まとめ【マン的総論】

女性にとって股間(おまた、まんこ)は極めて重要な器官であるにもかかわらず、これまで股間への急所攻撃(マン的)が軽視されてきました。ほとんどの女性はマン的を完全に理解しておらず、恥ずかしさから自己のマン的体験を語るのを躊躇する傾向にあります。そのため、マン的に関する詳細な知識が、男性だけでなく女性にも広く知られておらず、お互いに共通認識を持っていないため、その痛みについて誤解が多いことが問題となっています。

マン的の基礎知識

マン的の意味

マン的(まんてき、Manteki)とは、女性の外陰部(股間)に対して打撃をする攻撃のことです。

男性の睾丸(金玉、Golden balls)への攻撃のことをいっぱんに「金的(きんてき、Kinteki)」と呼ぶのに対し、日本語における女性器の俗語であるマンコ(Manko)への攻撃であることから「マン的」と呼ばれるようになりました。マン的攻撃マン蹴りと言うこともあります。

放送禁止用語ではないものの、それに近い用語であるため「急所」「局部」「局所」と表現することがあります(本当に急所に該当するかどうかは急所という用語の定義による)。

護身術のマン的

スポーツでは性別を問わずベルトラインより下の下腹部への攻撃は「ローブロー(Low Blow)」と呼ばれ、禁止されています。

しかし、股間への攻撃(金的)は、護身術すなわち女性が男性攻撃者に襲われたときの自己防衛(self-defense)の手段として非常によく使われるテクニックです。この反撃により、攻撃者は一時的に攻撃者を無力化し、容易に逃げ出すことができます。女性が自己防衛として格闘技を習得することがあり、護身術として教える教室もあります。相手が近距離にいる場合、股間への膝蹴りは実行しやすく、防御が困難であるというメリットがあります。

最近ではスポーツ、筋トレ、フィットネス目的で格闘技術を習得する女性が増えています。小柄で華奢な女性だから弱いと決めつけるのは誤りです。力が弱そうな女性攻撃者であっても油断してはいけません。女性も武器を使ったり、意外な力を発揮したりする場合があります。金的攻撃(マン的)は女性攻撃者に対しても使うことができ、女性が女性攻撃者から身を守る女性同士の護身術としても使えます。

女性も痛いのは事実

男性の睾丸への打撃はコメディの手法としてよく知られています。また、女性が身を守るための護身術として金的蹴りが有効な手段であることが広く知られています。男性が出産の痛みを理解できないのと同様に、女性は金的の痛みを理解できません。しかし、そのことが強調されすぎて、「女性は睾丸が無いからマン的は痛くない」と誤解している女性が多く、自分の股間を打撃から守る意識が極めて希薄です。これを「睾丸無知」と言うことがあります。

男子とは異なり、幼い時に女子同士でいたずらでマン的をすることが無いため、マン的の本当の痛さを知らない女子が多いのです。股間への打撃による痛みを感じるのは男性だけというのは間違いです。女性の股間も痛いのです。

女子総合格闘家・藤野恵実選手(Emi Fujino)も悶絶する痛さ https://x.com/emi_fujino/status/973923293362241537

さらに厄介なことがあります。それは、男性の痛みは世界共通であるのに対し、女性の痛みは女性共通ではないということです。最新の研究では、女性の下腹部にある神経の数や構成には個人差があることが判明しており、生理痛や性感に個人差があるのと同様に、マン的の痛みも女性によって異なります。そのため、女性同士でも理解しあうことが難しいのです。

参考リンク

女性のオルガズムを治療する専門医たち(BBC、100 Women 2016: Researching the female orgasm)
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38179970
https://www.bbc.com/news/magazine-38170324
・性器部分の5つの性感帯(クリトリス、膣の開口部、子宮頚部、肛門、会陰部)に走る神経終末の数は、女性によって異なる

以上のことを踏まえて、マン的の痛みを強烈なものから順に3段階に分けて解説します。なお、痛みの数値レベルは男性の金的を10とした場合の痛みの強さを表したイメージであり個人差があります。

  • クリトリスの突き上げ攻撃(レベル9~10相当)
  • 恥骨の強打(レベル5〜8相当)
  • その他の外陰部の強打(レベル2〜6相当)

クリトリスの突き上げ攻撃(レベル9~10相当)

マン的の中で最高レベルの痛みが発生するのは、クリトリス(陰核)を下から上向きに突き上げる打撃です。クリトリス周囲の神経が恥骨に押しつぶされる衝撃は「股間が焼けるような鋭い痛み」と表現されます。

注:「骨の痛打ではない」ことに注意してください。クリトリス神経の圧搾(プレス)であり痛みの種類が異なります。

クリトリスは小さく狙いにくいように見えます。しかし、物理学的には女性の股間が逆V字型の構造であることと三角形状の空洞があることを利用すれば、女性の太ももの間の膝を入れて思いっきり突き上げるだけで股間中央にほぼ確実に命中します。

クリトリスは意外と大きい

クリトリスClitoris)は、陰核(いんかく)とも言い、女性の尿道口の上にある性感帯です。発生学的には男性における陰茎(ペニス、Penis或いはTinko)に相当します。

陰核は、先端の陰核亀頭(Clitoral glans)と、逆V字型の陰核体(陰核脚、Clitoral crus)などで構成されています。また、小陰唇の近くには前庭球(クリトリス球根、Vestibular Bulbs)があります。

  • 陰核亀頭:外部に露出している先端部分
  • 陰核体:左右の陰唇内部に続く海綿体組織

先端の陰核亀頭は成人女性で約5mmほどの大きさですが、内部の組織を含めると約10cmもあり比較的大きな器官です(日本男子の短小なペニスより長いかもしれない)。女性は、陰核に対して一定の性的刺激が継続すると陰核全体が勃起し、やがて性的興奮の最高潮、オーガズムOrgasm)に達します。

最近では、クリトリス先端を吸引して刺激を与えるアダルトグッズ(吸うやつ、ウーマナイザー)が開発されています。女性の多くは、クリトリス先端を空気で吸引するだけで数秒もしくは数十秒でオーガズムに達します。このように、非接触であるにもかかわらず空気の力だけで絶頂に達するクリトリスは、非接触ではイキにくいペニスより明らかに敏感であることが分かります。

ウーマナイザーの使い方の説明図。陰唇を開き、陰核亀頭を覆い密着させる。クリトリス自体には接触せずに空気の力で振動を与える電動吸引器具である。早ければ数十秒でオーガズムに達する。

焼けるような痛み

2020年以降の研究によりクリトリスの構造がようやく理解されるようになりました。

2022年(令和4年)10月、オレゴン健康科学大学医学部のブレア・ピーターズ医学博士(Blair Peters, M.D.)は、人間のクリトリスには1万本以上の神経線維が存在するとの研究結果を発表しました。ペニスの神経が約4000本であることから、本数だけで言えばクリトリスは2.5倍敏感であると考えられます。

しかし、痛みの強さは本数だけでなく、神経の「密度」が影響することが分かっています。1回の衝撃で同時に刺激を受けた神経の本数が痛みの強さであり、打撃を受けた部分に神経が密集していれば痛みも強くなります。つまり密度が高いほど痛みが強いのです。直径5mmの太さしかないクリトリスに2.5倍の神経が密集しているのですから、男性には想像できないレベルの痛みが生じることは明らかです。

痛みの種類も、男性の睾丸とはまったく異なります

クリトリスの神経にはAδ線維(Aデルタ)とC線維の両方が大量に含まれています。Aδ線維は電撃的な鋭い痛み、C線維は鈍い痛みを伝えます。Aδ線維は伝導速度が速いため、クリトリスに打撃を与えると瞬時に、火傷または刃物で切ったような強烈な鋭い激痛が走ります。

足をうったり、やけどをしたときに感じる最初の鋭い痛みはAδ線維によるものでファーストペイン(First Pain)と呼ばれる。Credit:アリナミン製薬株式会社 https://actage.jp/column/20101222_vol4.html

クリトリスに火がついてチリチリと焼け焦げているような感覚を覚えます(重症の切れ痔の患者は排便するときに「焼けるような痛み」を感じるらしい)。女性は想定外の激痛に耐えられず大声で絶叫します。その後、C線維がゆっくりとした鈍くズキズキする痛みを伝えます。

クリトリスは骨に固定されている

女性のクリトリスは懸垂靭帯(クリトリス吊り靭帯、Suspensory ligament of clitoris)によって恥骨に固定されています。

クリトリスと恥骨の位置関係を示した図。恥骨結合から伸びる靭帯によってクリトリスは吊り下げられている。血管(赤と青)と神経(黄色)は最も太いものだけ描いてあるが、実際にはさらに細い血管と神経に枝分かれして複雑に絡み合っている。
参考リンク

Abdominoplasty and Clitoris Evaluation: A Prospective Study on Sexual Pleasure in Women Undergoing Abdominoplasty(腹部整形とクリトリスの評価:腹部整形を受ける女性の性的快感に関する前向き研究)
https://link.springer.com/article/10.1007/s00266-023-03301-6
Eloi de Clermont-Tonnerre, Frédéric Pigneur, Claire Guinier, Charles Botter, Simone La Padula, Jean Paul Meningaud & Barbara Hersant
Aesth Plast Surg 47, 1922–1930 (2023).

男性のペニスと睾丸がブラブラしているのに対して、女性のクリトリスは固い恥骨にしっかりと固定されています。クリトリス周辺部はそれを守る脂肪が無いため、股間に硬い物体が下から上向きに衝突すると、その硬い物体と恥骨の間にクリトリスが挟まれます。クリトリス周辺部の神経と血管が、恥骨との間で圧搾(プレス)され、耐え難い激痛が走ります。ちなみに、指先には約2500個の神経終末がありますから、ドアで4回以上指を挟むのと同じ痛みと言えます。

なお、睾丸は軽くはじくだけで痛みを感じることがありますが、クリトリスは恥骨と強くぶつかることで痛みを感じます。

恥骨結合の拡大図。骨盤(仙骨)から出た神経は尻のほうから、膣、陰唇を通って恥骨結合、靭帯を経由してクリトリスへ集中している。
マン的は、クリトリスを斜め45度上向きに、奥に押し込むように蹴ると、恥骨との間で挟まれることによって最も痛くなる。

クリ突き上げ攻撃の例

クリトリスは露出している亀頭部分が小さいので狙いにくいと言われていますが、それは完全なる間違いです

前述のようにクリトリス陰核体は股間にしっかりと固定されているため、膝で陰裂(割れ目)を打突すれば確実にヒットします。男性の睾丸は前蹴りでもヒットするのに対し、クリトリスは脚を開いた状態で下から上向きに突き上げることでヒットします。14歳の兄が13歳の妹とのケンカで膝をヒットさせ悶絶させた事例が報告されています(アメリカ)。

  • 膝で股間を突き上げる(至近距離の膝蹴りが最もヒットしやすい)
  • まんこアッパーカット
  • 仰向けに倒れた女子の股間を割れ目に沿って蹴る、踏む
  • 後ろから股の間を蹴って、足の先がクリトリスにヒット

また、女子が誤ってクリトリスを強打した事例も多数報告されています。

  • またがった状態で鉄棒、平均台に落ちる
  • テーブルの角、階段の角に当たる
  • 自転車転倒時にハンドルにぶつかる
  • 女子キャッチャーの股間に硬式ボールが直撃

日本の女子スポーツ界におけるマン的の最も有名な事例としては、2011年(平成23年)7月にドイツ・ヴォルフスブルクで開催された2011FIFAサッカー女子ワールドカップ準々決勝(a)ドイツ対日本の試合が挙げられます。

この試合の後半91分過ぎに、ドイツ代表ジモーネ・ラウデール(Simone LAUDEHR)選手のスパイクのかかと(ヒールキック)が運悪く、日本代表の澤穂希(さわ・ほまれ、Homare SAWA)選手の股間に命中し、脚を開いていた澤選手のクリトリスを突き上げてしまいました(逆に、2013年3月の試合では日本人女子選手がドイツ選手の股間を蹴っているのでお互い様です)。

澤選手は数分間起き上がることができず手でクリトリスを押さえたまま担架で運ばれ、ピッチ外で治療を受けました。ちなみに、澤選手はこの大会で最優秀選手賞にあたる「ゴールデンボール賞」を受賞しました。

クリーンヒット時の反応と予後

クリトリスの強打は、同時に恥骨の強打(後述)でもあるので、「焼けるような激しい痛み」と同時に「骨に響く重い痛み」も発生します。また、クリトリスへの突き上げがクリーンヒット(クリティカルヒット)した場合、痛みだけでなく神経性ショックが発生することがあります。

神経性ショックNeurogenic shock)は、強打によって痛覚信号が急激かつ大量に脳へ伝達され、自律神経(特に迷走神経)を介して反射的な反応が起きます。血管迷走神経反射Vasovagal reflex)とも呼ばれ、血管が拡張して血圧が急降下(低血圧)、心拍数が低下(徐脈)、脳への血流が一時的に不足して立ち上がれないほどのふらつき、失神、吐き気、冷や汗などの症状が出る状態です。これは男性の金的でよく発生する症状です。クリトリスに直撃すると地面に倒れこんで苦しむのはこの症状によるものです。

女性が数分間回復せず苦しみ続け、クリトリスを押さえたまま立てない場合は確実にクリーンヒットしています。クリトリスの神経を損傷している可能性が高いです。数分以上症状が続く場合は早急に医療機関を受診するべきです。骨盤前部、特に恥骨結合部に外傷を負っている場合やクリトリスの神経損傷の場合は、症状が長期間続くことがあります。

参考リンク

【症例】恥骨をけられたことによる鞭打ち症状(吐き気・しびれ)(岩永朋之整体サロン)
https://iwanaga.me/case-chikotukick/
・子供に恥骨をおもいっきり蹴られその衝撃により首にむち打ち症状が出現、徐々に首の張り、肩こり、吐き気が出現

恥骨の強打(レベル5〜8相当)

マン的の中で女性が最も多く経験するのは、恥骨の強打です。女性は骨盤が広く標的が大きいので骨を攻撃されるのが一般的です。

「股間を殴られたがそれほど痛くない」などと主張する女性は完全に誤解しています。外陰部や恥骨、下腹部、太ももの内側のどこかを殴られたことはあっても、クリトリスを直接突き上げられた経験が無いだけです。

注:これは骨の打撲の痛みであって、上記のクリーンヒットとは異なります。

骨に響くような痛み

女性の恥骨を強打すると骨盤全体にツーンと響く痛みがあります。脂肪に守られていない骨の打撲であり、脛骨の弁慶の泣き所、太ももの側面の膝蹴り(ももかん)、ヒジを打った時の電気が走るようなしびれ、足の小指をぶつけるといった痛みと同様です。

「恥骨は痛いけど金的よりまし」「股間の痛打は骨に響くような痛み」などと表現されるのはこの痛みのことです。

恥骨と恥骨結合

恥骨(ちこつ、Pubis)は、骨盤(こつばん、Pelvis)の前部にある平たい骨で、左右の恥骨が中央で連結されている構造を持っています。

特に女性は皮膚のすぐ下に骨があり、衝撃を吸収するクッションが少ないため、堅い膝や足の打撃を受けた場合、打撃の力がダイレクトに骨に伝わります。女性は骨盤が広く「骨に響くような痛み」がより広範囲に響きやすいです。

  • 外陰部・膀胱・子宮・腸管など:不快感・吐き気・排尿困難など
  • 恥骨筋・内転筋:炎症が起きると歩行が困難になる

恥骨結合(ちこつけつごう、Pubic symphysis)は左右の恥骨をつなぐ軟骨で、この部分は衝撃に弱い構造です。多くの痛覚神経が近くを走行し、打撃により損傷・炎症が起きると激しい鈍痛が起こります。妊娠経験者は恥骨結合が柔らかくなっている場合があり、打撃による痛みがより強くなることがあります。

恥丘

恥丘(ちきゅう、Mons pubis)は、恥骨結合と隣接する恥骨の前に位置する丸い脂肪組織の塊であり、一般的に女性の陰裂上部にある緩やかな盛り上がり(隆起)をいいます。「ヴィーナスの丘」「土手」「モリマン」とも言います。

女性の場合、恥骨が内部から張り出す事で隆起を形成し、女性の生殖器を外的衝撃(性行為時のピストン運動による衝撃)から保護しています。思春期になるとこの隆起は陰毛(いんもう、Pubic hair)で覆われるようになります。

要するに、女性の陰毛が生えている部分を強打すると、骨だけでなく下腹部全体に響くということです。

恥骨打撲

恥骨打撲は、転倒・スポーツ事故・対人衝突・打撃などで起こる比較的一般的な打撲です。女性の場合は数分間強い痛みがありますが、クリトリスに当たっていなければすぐに回復する場合もあります。

逆に、女性の骨盤内には子宮や卵巣があるため、強打によって骨盤内が振動して子宮や卵巣が揺さぶられ、睾丸を蹴られた後に感じる吐き気と、生理痛や排卵痛のような鈍痛が続くこともあります。また、多くの内転筋の一部がこの部位に付着しているため、脚を動かすだけでも痛みを感じます。

恥骨打撲は見た目以上に痛みが強く、放置すると慢性化することもあります。早期の冷却と安静が最も重要で、違和感が数日以上続く場合は医師の診断が推奨されます。

  • 軽度(単純な打撲)3〜7日程度で安静と冷却で自然回復
  • 中等度(内出血・腫れ・歩行困難)2〜4週間の治癒期間が目安
  • 重度(恥骨結合炎・骨折・慢性化)全治数ヶ月以上

その他の外陰部の強打(レベル2〜6相当)

外陰部にも神経がたくさんあり、内性器(子宮や卵巣)に衝撃があると痛みを感じることがあります。

外傷の危険性は女子のほうが圧倒的に高いです。ただし、外傷が無ければ、上記のクリトリスや恥骨の強打より回復が早いです。

外陰部の強打の例

クリトリスにも恥骨にも当たらないマン的も考えられます。ただし、外陰部は股の間に隠れているので「マン的」として狙って当てるというよりも、女性自身が誤って強打する事故のほうが多いです。スポーツではサドル、床、相手の膝などに外陰部が直接衝突することがあります。

  • 勢いよく開脚して床に陰部を強打
  • 恥骨、子宮、卵巣に響くように下腹部を殴る
  • 上から転落して強打する、他の選手の上に落ちる
  • 自転車の振動でサドルに強打する
  • スライディングをした選手の足が当たる
  • 股をめがけて動物が突進する、牛の角が刺さる

外陰部の痛み

女性の股間には外陰神経、会陰神経、陰部神経、陰核背神経など複数の末梢神経が密集しています。神経密度が高く非常に敏感です。この部分への打撃は骨盤神経叢や仙髄(S2~S4)を経由して強い疼痛反応を起こします。

女性骨盤の断面。仙骨のS2、S3、S4から出た神経が子宮と肛門の間を通り、陰唇小帯、大陰唇、クリトリスに伸びている。

応急処置としては冷却・安静・鎮痛、さらに治療が必要な場合は、子供は小児科、大人は婦人科へ受診します。

  • 保冷剤や氷で患部を冷やして炎症や痛みを抑える(皮膚に直接当てないように冷やす)
  • 非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDs)で対処する
  • 患者を仰向けに寝かせて足を少し高くし、脚を伸ばして股関節を緩める姿勢を取る

尻への攻撃が股間に当たる

女性の陰部の開口部(肛門、尿道、膣、その他バルトリン腺開口部などの分泌腺の出口)は近接しているので、一撃ですべての開口部とその奥にある管、臓器に衝撃を与えることが可能です。

例えば、女性の股を後ろから打撃すれば通常は尻にヒットしますが、当たり所が悪ければ陰唇または会陰部にヒットします。

  • スノーボード、スケートボードにしゃがんで金具が当たる
  • 硬い物体や突起物の上に尻もちをつく
  • 尻を突き出した状態で蹴られる
  • カンチョーが誤って膣に刺さる

外傷の危険性

女性の外陰部の強打は、痛みより「外傷」のほうが注意が必要です。一般的には男性のほうが性器の外傷を受けやすいとされているものの、女性も特定の状況において深刻な性器外傷となることがあります。単なる打撲などと考えてはいけません。特に大陰唇・小陰唇・前庭部・膣口などは皮膚よりもデリケートな粘膜構造なので、わずかな摩擦や衝撃でも、裂傷・出血・炎症が起きやすいです。

男性とは異なり、女性の陰部は開口部が多く、その内部にはそれらを仕切るための薄い壁が多く存在します。外陰部への打撃によって薄い壁が破れることもあります。

  • 膣と直腸は、直腸膣中隔(ちょくちょうちつちゅうかく、Rectovaginal Septum)と呼ばれる薄い壁1枚で仕切られていて、その厚さは平均約2〜4mm程度です。
  • 膣と尿道は、膣前壁(ちつぜんへき、Vaginal Anterior Wall)と呼ばれる薄い壁1枚で仕切られていて、一般的な厚さは通常約3〜6mm程度です。
  • 性交未経験の処女の場合は膣内に処女膜(しょじょまく、Hymen)があります。

打撲による痛みのほかに、ケガや内出血があった場合は別の痛みが生じることは言うまでもなく、外科的処置が必要となる場合があります。外傷があっても自らすすんで申告するのが恥ずかしいと考える女性も多く、裸で脚を広げないと本当の症状の程度が分からないので治療が遅れることがあります。治療が遅れれば遅れるほど症状が進行するため、外陰部血腫、骨折、排尿困難、内臓損傷など非常に深刻な事態になる可能性があります。最悪の場合は生命の危険、生殖機能の喪失、障害や後遺症が残る場合もあります。

補足

痛みを知らない女性はご注意を

多くの女性はクリトリスを刺激した時の快感を知っていても、クリトリスを直撃された時の痛みを知らないため、自分の経験をもとに医学的に誤った情報を発信してしまう可能性があります。「股間を強打した経験はあるがそんなに痛くない」「硬い棒で突かれるのはむしろ得意」などと強がる女性も多いようですが、それは、幸運にも自分のクリトリスにマン的が当たった経験が無いだけです。

痛がる女性をバカにするのは無知をひけらかしているのと同じです。罰が当たらないように十分ご注意ください。

ローブロー

スポーツで、性別にかかわらずローブロー(Low Blow)が反則となっているのは医学的リスクだけでなく、技術を競うスポーツ精神に対する重大な挑戦であることが理由となっています。故意であれば凶器攻撃と同じ暴挙です。

マン的を正確に行う技術があれば女性不審者に対する護身術として用いることは可能ですが、いっぱんに故意のマン的は正当防衛を除いて犯罪であり、性犯罪に該当する場合もあります。スポーツであっても絶対に許されません(一部のプロレスラーを除く)。学校のスポーツにおいても故意の下腹部攻撃があった場合は厳しく断罪されるべきです。それが正しい「保健」の教育です。

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