女子アスリートのなかでも特にバレーボールとハンドボールの女子選手は、運動不足の女性と比較して、クリトリスの血流と性機能が良好である(感じやすい)ことが示されました。優れた体力と性機能の向上は相関関係にあり、クリトリスの血流と関係があるものと考えられます。

概要
トルコのファティフ大学(Fatih University)医学部泌尿器科教授のオメル・ファルク・カラタス医学博士(Dr Omer Faruk Karatas、Figure 1)の研究グループは、トルコの女性エリートアスリート(バレーボール選手とハンドボール選手)と運動不足の健康な女性で、クリトリスの血流と性機能に違いがあるかを調べました。

分析の結果、女性アスリートのほうがクリトリスの血流(Clitoral Blood Flow)と性機能(Sexual Function)が優れていることが分かりました。女性アスリートは優れた体力を持ち、身体、精神、セクシュアリティに自信を持っていることが、この相関と関連している可能性があります。
この研究は性機能とクリトリス血流に関してエリート女性アスリートと健康な女性被験者を比較した世界初の研究であり、2010年3月に「Journal of Sexual Medicine」誌に掲載されました。
<論文のキャプチャ>
The Evaluation of Clitoral Blood Flow and Sexual Function in Elite Female Athletes(エリート女性アスリートにおけるクリトリスの血流と性機能に関する研究)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19912502/
Karatas OF, Baltaci G, Ilerisoy Z, Bayrak O, Cimentepe E, Irmak R, and Unal D. Journal of Sexual Medicine 2010 Mar;7(3):1185-1189.
研究の要旨
被験者
トルコの20歳から45歳までの女性エリートアスリート25名と、年齢・体重・身長を一致させた健康な女性被験者25名がボランティアとしてこの実験に参加しました(参考としてFigure 2~4)。被験者は全員、非喫煙者で、泌尿生殖器の検査所見が正常であり、単一のパートナーと安定した異性愛関係にあり、性的に活動的であることが確認されました。
- グループI:1日最低4時間の激しい運動を定期的に行い、週に1回のリーグ戦に出場しているプロのバレーボールまたはハンドボール女子選手25名(平均年齢28.4歳、平均BMI:20.7)
- グループII:週2時間を超える運動・スポーツ活動を行っていない健康な女性被験者25名(平均年齢28.9歳、平均BMI:21.6)
平均年齢、平均初潮年齢、平均結婚年齢、BMIは両グループでほぼ同等でしたが、平均出産回数に関しては低レベルの有意差が認められました。



調査方法
女性性機能指数(FSFI)
すべての女性被験者は、超音波検査の前に女性性機能指数(FSFI: Female Sexual Function Index)の質問票に記入するように指示されました。FSFIの質問事項はトルコ語に翻訳され、泌尿器科資格を持つ看護師の監督の下、被験者が回答を記入しました。
FSFIは、性欲、性的興奮、潤滑、オルガスム、性的満足度、痛みなど女性性機能を評価するために開発された国際的統一質問票です。FSFIスコアが高いほど、性機能が優れていることを表します。
クリトリスカラードップラー超音波検査
すべての女性被験者に対して、13.5MHz超音波リニアプローブ(探触子)を用いた高解像度カラードップラー超音波検査を実施し(Figure 5)、血流速度や抵抗係数を含むクリトリス血流パラメータ(Clitoral Blood Flow Parameters)を測定しました。
- 収縮期最高血流速度(PSV: peak systolic velocity)
- 拡張期終末血流速度(EDV: enddiastolic velocity)
- 抵抗係数(RI: resistive index、RI = PSV – EDV/PSV)

被験者は下半身を露出した砕石位(さいせきい、Lithotomy position、Figure 6)の体位をとり、超音波プローブでクリトリス周辺を検査しました。超音波検査中、超音波プローブで性器組織に有意な圧力や性的な刺激を与えることはありませんでした。

調査結果
クリトリスの血流
グループIは、平均血流速度(PSVおよびEDV)がグループIIよりも統計学的に優位に高く、平均RIはほぼ同等で有意差は認められませんでした。
- グループI:平均PSV 15.3cm/s、平均EDV 5.8cm/s、RI=0.64
- グループII:平均PSV 11.8cm/s、平均EDV 4.4cm/s、RI=0.62
つまり、バレーボールまたはハンドボール女子選手は性的刺激が無い状態であっても、一般女性よりもクリトリスの血流が良いことが分かりました。一流の女性アスリートのクリトリスの血流は、運動による全身の良い血流によってもたらされる可能性があります(Figure 7)。

FSFIスコア
グループI(平均28.3)は、FSFI合計スコアがグループII(平均23.4)よりも統計学的に優位に高く、バレーボールまたはハンドボール女子選手と運動不足の女性の間で主観的女性性機能に有意な差があることがわかりました。また、性欲領域(Desire)を除く全領域スコアに統計的に有意な差が認められました。
女性アスリートの定期的な運動によって会陰筋の筋力と反射能が向上することは、性機能の改善に重要な効果をもたらすと考えられます。
補足
以下、当サイトによる補足です。
クリトリスの基本
クリトリス(陰核、Clitoris)は女性の小陰唇の前部にある勃起器官であり、クリトリスが性的刺激を受けると、クリトリス周辺部が充血し、クリトリスの長さと直径が増加し、血流量がほぼ2倍になることが実証されています。
特に女性の性反応周期の覚醒期とオーガズム期(性的興奮の絶頂、Orgasm)において、女性の性生活に大きく貢献することが分かっています。
性的興奮時のクリトリスの勃起にかかわる血流(Clitoral Blood Flow)は、クリトリスカラードップラー超音波検査(体内の血流を色つきの画像でリアルタイムに表示する検査、Figure 8)を用いて測定します。カラードップラー法(CDI: Color Doppler Imaging)は、音源が近づくと音が高く、遠ざかると低く聞こえるドップラー効果と同じ原理で、超音波が血流(赤血球など)に当たって跳ね返ってくる際の周波数の変化を測定し、血流の方向や速さを割り出します。
超音波を用いたクリトリス血流量、PSV、EDVの測定は、女性の性的反応、性機能障害の評価に推奨されています。

BMIと女性性機能
これまでの研究により、6つのFSFIパラメータのうち、性欲と疼痛の領域はBMIと相関しない一方、覚醒、潤滑、オーガズム、満足の領域はBMIと相関し、過体重の女性はFSFIスコアが有意に低いことが知られています(太っている人はマンコが感じにくい)。
今回の実験では、年齢とBMIの点で両グループをほぼ同一とし、BMIの影響を排除しています。
サイクリング
女子スポーツの中には、サイクリングや乗馬のように女性器を常に圧迫する競技があり、女性器を適切にケアしなければ女性性機能障害になる女子アスリートも多くいます。
しかし、最近の研究ではそのような自転車競技女子サイクリストであっても、ランナーや水泳選手と比べて性機能に活発であることが示されているため、女子アスリートは競技に限らず、性機能が通常の一般女性より良好である(つまり、マンコが感じやすい)と言えます。
骨盤底筋とクリトリス
骨盤底筋とクリトリス領域における性器の血流の増加は、トップクラスの女性アスリートの性機能を改善する可能性があると推測できます。女性の骨盤底筋群は、性器の十分な興奮とオーガズムの達成に不可欠です。
しかし、バレーボールやハンドボールのようなジャンプ系のスポーツは骨盤底筋を鍛えにくく、逆にジャンプの衝撃で腹圧がかかり骨盤底筋の機能低下を招くことがあります。実際に、ブラジルの2022年の研究では、ブラジルの女子バレーボール選手83名(平均年齢26.6歳)の25.3%に尿漏れが見られ、骨盤底の機能が低下していると報告されています。
それでも、性的刺激が無い状態でクリトリスの血流が多いということは、バレーボールやハンドボールの普段のトレーニングとは別に、骨盤底筋トレーニング(膣トレ)をすればするほど性的に興奮し、マンコが感じやすくなる可能性があると言えます。





