オックスフォードスケール(Oxford Scale)は、女性の膣の締まり具合(膣圧)を指で確認することによって骨盤底筋群の筋力を自己評価する方法であり、世界中で最も用いられる標準的な臨床評価法です。おもに女性の尿失禁・骨盤臓器脱・出産後・スポーツ選手などの筋機能評価として使われます。すべての女性、特に女子アスリートは当然、理解しておくべき手法と言えます。
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膣の締まり具合と膣圧
膣圧(ちつあつ、Vaginal Pressure)とは、女性の膣の内部にかかる圧力のことです。膣自体は粘膜組織であり筋肉ではありませんが、膣を取り囲む骨盤底筋(Pelvic Floor Muscles、PFM)、特に膣括約筋が収縮すると、膣口・膣壁に張力を与え、膣が「締まる」ように感じます。
骨盤底筋群
骨盤底筋は骨盤の底の部分を支える筋肉であり、前側の恥骨・坐骨から、後ろ側の尾骨にかけて前後方向(マンコの割れ目と同じ方向)に伸びています。これにより、下腹部にある骨盤内の臓器が下に落ちないように支えています(Figure 1)。

骨盤底筋は1種類の筋肉ではなく、深会陰横筋、尿道括約筋、肛門挙筋、尾骨筋の4つの異なる筋が重なってできている筋肉の集合体であることから、骨盤底筋「群」と呼ばれることもあります(Figure 2)。

女性にとっての膣圧のメリット
骨盤底筋は、外陰部表面から約3cm内部に入った場所にあり、収縮すると尿道、膣、直腸が後ろから前方向に締められます(Figure 3)。
骨盤底筋は日常的な活動においては反射的に働く(力を入れようと意識しなくても勝手に動いてくれる)と考えられています。しかし、生活しているだけで勝手に強化されるものではなく、強い収縮力を得るには積極的なトレーニングが必要です。

女子アスリートは筋力があり膣圧も強いイメージがありますが、実は、競技によっては骨盤底筋の機能が低下することが知られています。低い膣圧で締まりが悪い場合、尿失禁、骨盤臓器脱、性交時の感覚低下などのリスクがあります。女性の身体として不健康であるだけでなく、競技中に尿を漏らすこともあるなどパフォーマンスにも影響します。
- 尿もれ予防(尿失禁対策)咳やくしゃみ、ジャンプなどで尿漏れが起こる
- 内臓下垂・子宮脱の予防、内臓が正しい位置に保たれる
- 姿勢・腰痛の改善に貢献
- 性生活の向上、オーガズム
膣圧が強いとモテるのは事実
高い膣圧で膣が締まっている女性は、骨盤底筋がよく働いており健康的と言えます。骨盤底筋を鍛えたら「性的感度が上がった」「濡れやすくなった」と言う女性もいます(トレーニングによって股間の血流が良くなったと思われる)。膣圧が強い女性は下半身に自信があるため、男性を受け入れやすく性行為を好む傾向にあります。
パートナーの男性にとっては、性交時の膣圧によって挿入中のペニス(Penis或いはTinko)の陰部神経がしごかれるため、性的満足、性的快感を得やすくなります(Figure 4)。締まりの良い女性器は男性に好まれ、セックスレスになりにくくなります。

膣圧の計測
骨盤底筋のトレーニング(膣トレ)によって膣圧を強化することが可能です。その際、膣圧を日々計測してトレーニングの成果を見ます。医療機関では、膣圧計やバイオフィードバック装置などの器具を膣内に挿入して、圧力の数値を測定します。
膣圧を指で測る方法
指を挿入して膣内を診る方法を指診(digital vaginal examination)といい、その中でもオックスフォードスケール(Oxford Scale)は世界的に有名な指診の手法です。
修正版オックスフォードスケール
1943年(昭和18年)に開発された原型のオックスフォードスケール(Oxford Muscle Scale)は、もともと全身(四肢)の筋力を評価するリハビリ目的で開発され、筋肉の収縮によって生じる力や強さを数値で表したものです。イギリス政府の研究グループである医学研究会議(Medical Research Council、MRC)が開発したことから、MRCスケール(MRC Scale)とも言います。
その後、1994年(平成6年)にMRCスケールを応用して、骨盤底研究の先駆者として知られるイギリスの女性理学療法士ジョセフィン・レイコック博士(Dr. Josephine Laycock PhD、愛称:Jo Laycock、1941-2022、Figure 5)の研究グループが、女性の骨盤底筋機能の評価のために策定したのが修正オックスフォードスケール(Modified Oxford Scale)です。

現在では、単に「オックスフォードスケール」と言えば、この修正版を指します。開発者の名前をとってLaycockスケールとも言います。
オックスフォードスケールは検査に特別な機器が不要で、産婦人科医、理学療法士、助産師が骨盤底筋の収縮力を触診で簡便に評価できることから世界中に普及しています。また、国際失禁学会(International Continence Society、ICS)や臨床ガイドラインが推奨し、数多くの研究によって膣圧測定機器による評価と有意な相関関係があることが報告されていることから、科学的に信頼性のある方法と言われています。
Dr Josephine Laycock (23/05/1941 – 08/08/2022) – A tribute
https://www.ics.org/news/1327
Jo Laycock(ICS国際失禁学会)
https://www.ics.org/members/awardsobserverships/lifetimeachievement/2011jolaycock
指を挿入するときの正しい姿勢
修正オックスフォードスケールでは、リラックスして仰向けに寝て、膝を曲げて足の裏を床につけます(いわゆるM字開脚、M-shaped spread legs、Figure 6-A)。このとき、太ももの筋肉が膣圧計測の妨げとなるため、脚をしっかりと開きます(legs wide open)。通常はこの姿勢で女性器が露出しますが、膣に指を挿入しにくい場合は、腰の下にクッションを入れます。
人差し指または中指を1本だけ、膣の前壁(膀胱側、上側)に沿って3〜4cm程度の深さまでゆっくり挿入します(Figure 6-B)。指に無香料のウォーターベースジェルなど清潔な潤滑剤を少量つけると挿入しやすくなります。
指の腹がGスポットと呼ばれる膣の前壁にあたるようにし、筋肉の収縮が最もよく感じられる位置にセットします。

開口部だけに力を入れる
腹筋や太ももの内側、お尻の筋肉はリラックスしたまま、膣の周りの筋肉(骨盤底筋)だけをゆっくり収縮します。3~5秒かけてゆっくり締め、力を抜きます。膣を収縮した時に指先に感じる「筋収縮の強さ」「押し返される感触」「持続時間」の3点を観察します。
骨盤底筋だけを使うイメージを言葉で説明すると次のような感覚であり、外陰部の「開口部だけ」に力を入れるように注意します。
- おしっこを途中で止める
- おならを我慢するように締めて、上に引き上げる
- 肛門だけを締める=お尻全体の大きな筋肉に力を入れてはいけない
- 膣だけを締める=腹筋や太ももに力を入れない
シンプルな5段階評価(目安)
指の感覚を以下の目安で自己評価します。
一般に最低限の日常生活には「グレード3」が必要とされていますが、強い衝撃があると失禁する可能性があります。「グレード4以上」で良好な骨盤底筋とされ、性交渉でオーガズムも得られ、尿漏れなど日常生活に支障がないとされています。日本では、グレード5相当の女性器を「名器」と言います。
- グレード0:無収縮(No contraction)
- グレード1:微弱な反応(Flicker)疾病リスクが高い
- グレード2:弱い収縮(Weak contraction)日常生活に支障あり
- グレード3:穏やかな収縮(Moderate with Lift)不安定な場合あり
- グレード4:良好な収縮(Good、Satisfactory)尿漏れは起きにくい
- グレード5:強い収縮(Strong)自発的コントロール可能
グレード0:無収縮
グレード0は、無収縮、筋肉の無反応(No contraction、No muscle activity)であり、骨盤底筋に力を入れようとしているにもかかわらず収縮感が無く、指に全く圧を感じない、収縮の動きがない状態です。腹筋、太もも、お尻の筋肉を使わないと締められないのは「骨盤底筋機能不全」です。
グレード0の状態では骨盤底筋の麻痺が疑われ、単なる膣トレでは済まないレベルです(完全に病気です)。できるだけ早急に泌尿器科または産婦人科の診察を受け、医学的な治療とリハビリを実施する必要があります。尿失禁など具体的な症状がある場合には健康保険が適用されます。
グレード1:微弱な反応
グレード1は、微弱な反応(フリッカー、Minor muscle “Flicker”)であり、指にわずかな筋の動きが触知される状態です。非常に弱い収縮を感じるものの、収縮が全く持続せず、かすかに筋肉がピクッと動くだけの状態です。尿失禁・臓器脱のリスクが非常に高いです。
グレード2:弱い収縮
グレード2は、弱い収縮(Weak contraction)であり、軽い収縮が触知できるが、指を押し返す力が弱い状態です。指が軽く押される感じはあるが、「圧迫」されるほどではなく、膣内の壁を指で押してもそれを押し返す力が無い状態です。
本来なら膣を収縮させると会陰と肛門が身体の中に引き込まれるため(in-drawing)、膣内に挿入した指が中に吸い込まれる感覚があるのが正常です。グレード2以下ではそれが無いので「まったく締まりがないガバガバな女性器」と言えます。今すぐに膣トレを始めるレベルです。
グレード3:穏やかな収縮
グレード3は、穏やかな収縮(Moderate with Lift)であり、最低限の機能的な筋力があるレベルです。明確な収縮があり、指を軽く押し返す程度の圧迫感がある状態です。肛門・直腸側から軽く押されるような感覚(Lift)がありますがすぐに元に戻ります。
グレード3は治療の目標となる標準のレベルと言われていますが、「病的ではない」というだけであって、締まりがあるとは言えない女性器です。
- グレード1:一瞬だけ反応する程度
- グレード2:指を押す時間がすぐに収縮が終わる
- グレード3:指を押す時間が1~3秒程度持続して肛門・直腸側から包み込む感じがある
グレード4:良好な収縮
グレード4は、良好な収縮(Good、Satisfactory)であり、力を入れている実感がある強い収縮で、指を横方向や上下方向にしっかり押し返す感触がある状態です。グレード4になると単に締める(Squeeze)だけでなく、膣壁と会陰部が明確に内側・上方に強く引き上げられる動き(Lift)があります。指を膣内に入れて評価した場合、指を吸い込まれるような感覚(上方に引っ張られる感覚)があります。
指を入れなくても、会陰部(膣と肛門の間)を外から観察すると、目に見えて少し持ち上がるのが分かります。
グレード4は「良好」なレベルで、日常生活でも安心できる正常な筋力といえます。アスリートに限らず、すべての女性が目指すべき膣圧はグレード4以上です。
グレード5:強い収縮
グレード5は、非常に強い収縮(Strong)であり、指が明確に引き込まれ、指を抜くことができないくらいの圧を感じる状態です。長時間(10秒以上)保持可能で安定してしっかり締められる状態です。きわめて訓練された女性器であり、自分で性的な筋力コントロールが可能です。
グレード5の女性器は、膣をすばやく締めて瞬時に緩められる切り替えのスピードが速く、スポーツ等の高負荷の状況でも安定しています。素早い動きをしても瞬時に股間を締められる筋力を持っています。また、股間の筋肉にスタミナがあって締め続けても疲れにくいのが特徴です。女子アスリートはグレード5になるように意識して鍛えるべきです。
- グレード4:十分な締め付けはあるが長時間続けると疲れる
- グレード5:動きのキレがある、締め続けても疲れを感じない
ケーゲルチェッカー
TENGAの社内ベンチャーである株式会社TENGAヘルスケア(東京都中央区)は、2023年(令和5年)に、K-Gel CHECKER(ケーゲルチェッカー、Figure 7)を発売を開始して人気を博しています。膣に指を入れる代わりにK-Gel CHECKERを使う女性が増えています。

K-Gel CHECKERは、膣に指を挿入する代わりにV字状の器具を挿入するだけで、骨盤底筋の筋力を気軽に測定できる器具です。開発の際には修正オックスフォードスケールを参考にして作られていますので、単なるおもちゃではなく、医学的に妥当な信頼性のある計測器具と言えます。
強弱2種類のバネが入っているので、2種類を使って計測します(Figure 8)。前述のオックスフォードスケールとの関係はおおむね次の通りです。

- グレード3:弱いバネを閉じ切る(できなければグレード2以下で改善が必要)
- グレード4:強いバネの目盛4~5
- グレード5:強いバネを閉じ切る
指を挿入するときの注意点
性交未経験者の場合
処女膜は完全に閉鎖された膜ではなく、実際は膣の入り口にあるヒダ状の組織です(Figure 9)。多くの場合、指1本くらいであれば無理なく膣内に挿入できる程度の柔軟性があります。そのため、処女膜があっても自分の膣の状態に合わせて、無理のない範囲で指を挿入し、膣圧の感覚を確認することは可能です。むしろ他人に指を無理やり入れられるより、自分で挿入したほうが安全と言えます。
ただし、処女膜が厚い、狭い場合は、指の挿入に痛みや出血があることがあります。痛みや違和感があるときは中止します。指の挿入によって処女膜が一部破れることもありますが、医学的にはまったく問題ありません(性交すれば破れて当然のものですから止血をすれば問題ないのです)。

手洗いと爪の確認
感染症リスク回避のため、指や手は必ず石鹸で清潔に洗い、爪は短く整え、傷や引っかきのリスクを下げます。衛生面をより高めるなら清潔な使い捨て手袋を使用するのが望ましいです。痛みや違和感がある場合は中止します。
代償運動に注意
代償運動とは、骨盤底筋の機能が低下している女性が膣を締めるために、骨盤底筋が使えない代わりに周囲の筋肉を使って締めようとする行動のことです。代償運動で膣を締められたとしても尿失禁を防ぐことはできないため、女性にとってはまったく意味のない運動です。
指で圧を感じても、それが骨盤底筋由来かを見極める必要があります。
- 内転筋:太ももがギュッとくっつく
- 腹直筋:お腹に力が入り息を止める
- 大殿筋:お尻が締まる
- 脊柱起立筋:腰が浮くように反る
追加検査PERFECTスキーム
2001年(平成13年)に、Laycock & Jerwoodが修正オックスフォードスケールをベースに、「PERFECTスキーム」という包括的な評価法を開発しました。指を押す圧力のほかに、持久力、反復力、スピードを計測します。
- P:圧力 Power (Pressure)膣圧測定機器を使用した筋力
- E:持久力 Endurance 収縮を10秒間維持できるか
- R:反復力 Repetition 10秒間で何回連続で収縮できるか
- F:速い収縮 Fast contractions
- E.C.T.:計測されたすべての収縮 Every Contraction Timed
Pelvic Floor Muscle Assessment: The PERFECT Scheme
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S003194060561108X
J Laycock, D Jerwood Physiotherapy Volume 87, Issue 12, December 2001, Pages 631-642
- 膣圧(ちつあつ)膣の締まり具合を指で確認する方法と評価の目安【膣圧の医学】
- 膣トレの歴史、膣を鍛える性技と膣圧測定の進化、ケーゲル体操
- 膣トレ(膣圧トレーニング)キツキツ筋トレ女子の動画作品例【締まる名器】
- 女性の性機能指数(FSFI)性生活満足度診断チェックリスト19項目

