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胸が大きくても最適なスポブラをつければサイクリングに影響しないとの研究結果

胸の大きい女性(巨乳女子)はバストが激しく揺れるため全身運動・有酸素運動を避けることが多く、サポート力の強いスポーツブラをつけると胸の圧迫感があります。しかし、サイクリングは胸の影響を気にする必要がないので、最適なスポーツブラを着用することで巨乳女子も安心して行うことができます。

概要

カナダのマギル大学(McGill University)運動生理学・体育学部のポスドク研究員カミラ・イリディ博士Camilla R. Illidi, Ph.D.Figure 1)が、2024年(令和6年)に発表した研究によると、スポーツブラ(スポブラ、sports bras)と胸の大きさbreast volume)の違いは、いずれも女性のサイクリングのパフォーマンスに影響しないことが分かりました。

つまり「スポーツブラ」と「大きいおっぱい」はいずれも胸の圧迫を感じることはありますが、サイクリングのパフォーマンスを下げるほどではないということです。胸の揺れと痛みが気になって全身運動をするのが億劫な、胸の大きい巨乳女子LBV: Girls with Large Breast Volume)にとってサイクリングはおすすめのエクササイズと言えます。

Figure 1 : カミラ・イリディ博士(Camilla R. Illidi, Ph.D.@CIllidi
参考リンク

Supported to perform: sports bras and breast volume do not impair cycling performance in females(パフォーマンスをサポート:スポーツブラと胸の大きさは女性のサイクリングパフォーマンスを損なわない)
https://www.frontiersin.org/journals/sports-and-active-living/articles/10.3389/fspor.2024.1439403/
Illidi CR and Jensen D (2024) Front. Sports Act. Living 6:1439403.

研究の趣旨と要旨

巨乳女子は運動を避けたがる?

2019年に、オーストラリアのウーロンゴン大学医学部バイオメカニクス研究室は、オーストラリア人女性355名(18~75歳)を、4つの乳房サイズグループ(小、中、大、特大)に分け、身体活動への参加状況と、乳房サイズが身体活動への参加状況に影響を与えるかについて調査しました。

この研究によると、非常に大きなバストを持つ女性women with hypertrophic breasts)は、活発な運動、特に高強度運動への参加が明らかに少なく、バストが運動の妨げになっていると感じているとのことです。

参考リンク

Does breast size affect how women participate in physical activity?(胸の大きさは女性の身体活動への参加に影響するか?)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30244978/
Coltman CE, Steele JR, McGhee DE. J Sci Med Sport. 2019 Mar;22(3):324-329

この研究を踏まえて、巨乳女子がスポーツブラをつけた場合に胸の圧迫感や息切れといった過度な症状を避けるために、心理的に運動を避ける傾向があり、貧乳女子よりも低い運動強度を自ら選択するのではないか?という仮説を立てて実験されました(Figure 2)。

Figure 2 : 下半身の柔軟性に自信のある爆乳アスリートの例。爆乳のせいで運動強度が低下するのか?が本研究の趣旨である。

巨乳の定義

この研究には、18~27歳の健康でレクリエーション活動に積極的な女性23名が参加しました。参加者のブラジャーのサイズの中央値が34DD(インチ表記)であったため、胸の大きい女性は34DD以上、胸が小さい女性は34DD未満と定義されました。

ブラサイズの「34DD」は、バンドサイズ34インチのDDカップであることを表しますが、日本のブラサイズでは、アンダー75cmのEカップ「E75」のブラに相当します(バスト95cmのEカップ、Figure 3、後述)。

Figure 3 : バストは乳首付近を通る胸囲、アンダー(バンドサイズ)は乳房の直下を通る胸囲である。

調査方法

乳房の動き、BMI(ボディマス指数)、および体重がパフォーマンス結果に及ぼす影響を最小限に抑えるために、エアロバイク運動で検証しました。

参加者は10kmサイクリングタイムトライアルを、2~5日間の間隔をあけて3回実施しました。24時間前から激しい運動を控え、当日はアルコールとカフェインを摂取しないよう指示されました。3回のサイクリングで、ブラの種類を変えました(Figure 4)。

  • ハイサポート圧縮スポーツブラ(High-support
  • ローサポートスポーツブラ(Low-support
  • ブランド、サイズ、デザイン、サポートに関係なく参加者が好む個人用ブラジャー(Personal
Figure 4 : 論文掲載画像。3種類のブラでそれぞれ10kmのサイクリングを行い、その違いを評価した。

運動前の安静時と、1km間隔ごとの最後の250m以内に、次の症状をそれぞれ評価しました(Figure 5)。

  • 自覚的運動強度RPE:全体的に努力しているという感覚はどのくらい強いですか?
  • 息切れの強度:全体的に呼吸しているという感覚はどのくらい強いですか?
  • 息切れの不快感:呼吸するとどのくらい不快または悪い感じがしますか?
  • ブラジャーによる胸の圧迫感の強度:胸郭の周りのブラジャーはどのくらいきつくまたは締め付けますか?
Figure 5 : 論文掲載画像。運動前の安静時とサイクリング1kmごとに生理学的および症状の評価を実施。

調査結果

巨乳はパフォーマンスに影響しない

この実験により、巨乳女子は貧乳女子に比べて運動中を通してブラジャーによる胸の締め付け感と息切れやRPEが強い傾向があったにもかかわらず、これらの差は統計的に有意ではなく、胸の大きさ(乳房の容積)が運動パフォーマンスには影響しないことが示されました。

  • 10kmサイクリングタイムトライアルの持続時間は変わらない
  • 運動中のいかなる心肺機能変数にも有意な影響を与えない

スポブラで運動パフォーマンスが低下することはない

スポーツブラ着用時における乳房の動き(乳房加速度)は、3つのスポーツブラ着用時すべてにおいてごくわずかであることが確認されました。心肺機能、アンダーバンド圧力、運動パフォーマンスについても、スポーツブラ着用時と乳房ボリュームグループ間に明らかな差は見られませんでした。

  • タイムトライアル中の平均乳房加速度は0.84±0.73cm/s2、タイムトライアルの所要時間は23.1±3.1分で、3つのスポーツブラの条件間で有意差はなかった
  • タイムトライアル中、スポーツブラの状態はいかなる心肺機能変数にも有意な影響を及ぼさなかった
  • 巨乳女子と貧乳女子の間でブラジャーのアンダーバンド圧力に有意差はなかった
  • ハイサポートブラは、ローサポートブラや個人用ブラよりも胸郭の周りがきつく、拘束されているように感じられるが、それでも運動パフォーマンスには影響がない

ブラの圧迫感は運動に影響しない

巨乳女子は、貧乳女子よりもスポーツブラによる胸の圧迫感、息切れ(強度と不快感)の症状が強く、この感覚は運動中のRPEの上昇と息切れ(強度と不快感)と関連していましたが、実験条件下では運動パフォーマンスには影響しませんでした。巨乳女子と貧乳女子の女性の間で、またサポートレベルの異なる最適にフィットしたスポーツブラの間でも、識別できる違いは見られませんでした。

つまり、サイズの大きいおっぱいは、ブラジャーによる締め付け感の認識が運動中の気分や快適さ(主観的な感覚)に影響するかもしれませんが、実際のパフォーマンスには影響しないことが分かりました。最適にフィットした快適なスポーツブラをつけることによって、巨乳女子でも楽しく運動をすることができることが示されました。

巨乳女子には非荷重運動がおすすめ

いっぱんに、ランニングや縄跳びなどの荷重運動weight bearing exercise)では、非荷重運動non-weight bearing exercise)に比べて上下振動が強く、乳房が独立して動くため筋・靭帯にストレスがかかります(Figure 6Figure 7)。

  • 荷重運動:体重を自分の骨や関節で直接支える運動(例:ランニング、ウォーキング、縄跳び、登山など)。
  • 非荷重運動:座ったり支えられた状態で行う運動で、体重が骨や関節に直接かからない(例:サイクリング、水泳、ローイングなど)。
Figure 6 : 荷重運動によって巨乳が上下に激しく振動している女性の例(イメージ)。
Figure 7 : 胸を揺らしながら胸トラップをする女性の例(イメージ)。

サイクリングは、サドルに座るため女性器への負担はあるものの、体重の大部分はサドル・ハンドル・ペダルに分散します。心肺・筋持久力向上につながり、バストに優しい非荷重有酸素運動と言えます(Figure 8)。

今回の実験では、胸のボリュームが大きいことや、サポート力の高いスポーツブラジャーの着用に伴う胸の圧迫感の症状の強さは、女性の自分のペースでの非荷重運動のパフォーマンスを妨げないことが示され、巨乳女子の運動に最適と言えます。全身運動によってバストの脂肪が減って「胸痩せ」することも期待できます。

Figure 8 : サイクリングは胸の揺れが少ない非荷重運動の一つである。Adidasコンセプトムービー、Nana Eikura

補足

以下、当サイトによる補足です。

ブラサイズE75

ブラサイズE75は、アンダーバスト75cmで、バスト95cm(Eカップ)です。この研究ではE75に相当するおっぱいの容積・重量を基準としています(Figure 912)。ちなみに、乳房の重量(g)は、容積(cm3)に脂肪組織の比重である約0.9(g/cm3)を掛けることで求められ、この計算方法はすべての女性において共通です。

E75のカップの直径は約14cm、容積は片乳710cm3(両乳で1420cm3)、重量は片乳約650g(両乳で約1.3kg)となります。

Figure 9 : 水着着用時のE75の女性の例。現役女子高生グラビアアイドルのたると氏(17歳)身長157cm、B95(Eカップ)、W60、H88。
Figure 10 : E75のスポブラのタグの例。ワコールCW-XスポーツブラHTY-128。

McGhee & Steele (2011) の研究により、ブラのカップを1段階上げ、アンダーバストを5cm減らすとほぼ同じ容量になることが分かっています。

参考リンク

Breast volume and bra size(胸の大きさとブラサイズの関係)
https://www.researchgate.net/publication/233594050_Breast_volume_and_bra_size
Deirdre E. McGhee, Julie R. Steele (2011) International Journal of Clothing Science and Technology 23(5):351-360

したがって、E75とほぼ同じ容積・重量のブラサイズは、C85、D80、F70、G65、H60となります(推定)。いずれにしても巨乳と言えます。

  • C85 = バスト100cm(Cカップ)アンダー85cm
  • D80 = バスト97.5cm(Dカップ)アンダー80cm
  • E75 = バスト95cm(Eカップ)アンダー75cm
  • F70 = バスト92.5cm(Fカップ)アンダー70cm
  • G65 = バスト90cm(Gカップ)アンダー65cm
  • H60 = バスト87.5cm(Hカップ)アンダー60cm
Figure 11 : スポブラをつけた状態のE75の高身長女子アスリートの例(花宮きょうこ氏)。身長180cm、B95(Eカップ)、W66、H95。
Figure 12 : ブラをつけていない状態のE75の女性の例(一条リオン氏)。身長157cm、B95(Eカップ)、W60、H89。

巨乳女子は胸を意識しすぎ?

通常の運動では乳房の動きが増えて乳房の不快感や痛みが生じる可能性があるため、巨乳であればあるほど運動パフォーマンスに及ぼす可能性があります。巨乳女子は普段から激しい運動をするときに胸の悩みを抱えています。

同一研究者による2025年の研究では、エアロバイク運動で、ハイサポートスポーツブラは通常のブラより胸の圧迫感をより強く誘発し、特に、巨乳女子は貧乳女子より息切れ、不快感がより高かったと回答しました。しかし、実際の測定値を見るとブラの種類や胸の大きさで呼吸器系の影響は変わらず、正しくフィットしたスポーツブラは生理的に負担をかけないことが分かりました。

参考リンク

Effects of Sports Bras and Breast Volume on Pulmonary System and Respiratory Symptom Responses to Exercise in Healthy Females(スポーツブラと胸のボリュームが健康な女性の運動に対する肺系および呼吸器症状反応に与える影響)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39283239/
Illidi CR, Jensen D.Med Sci Sports Exerc. 2025 Feb 1;57(2):305-316.

巨乳女子は、胸の締め付けによる圧迫感やブラジャーへの意識が強い(普段から意識しすぎている)ため、運動に対して心理的に消極的になってしまうことがあります。スポーツブラは普段よりアンダーをきつくしすぎず、カップを大きめにして、幅広バンド・太めストラップを選ぶと楽になることが多いです(Figure 13Figure 14)。

Figure 13 : スポーツブラはやや大きめのものを選ぶ。胸を小さく見せたい場合はスポブラではなく、サイクルジャージで調整したほうが良い。
Figure 14 : バンドサイズ(アンダーバスト)が適切なのにカップサイズが小さすぎる例。上乳が大きくはみ出し、肩ひもが浮いている。

スポーツブラと運動パフォーマンス

スポーツブラは、レクリエーション活動用であれ競技用であれ、乳房組織をサポートし、過度の動きによる乳房の痛みや不快感を防ぐことを目的としています。しかし、多くの女性がスポーツブラの胸の締め付け感により着用をためらう可能性があり、運動をやめてしまう可能性があるという報告もあります。

女性が感じるアンダーバンドのきつさは、アンダーバンドが合っていないだけでなく、スポーツブラの独特なデザイン(生地の選択、ストラップのデザイン、カップやネックラインの締め付け具合など)によって引き起こされる可能性が高いと考えられています。

この研究において、10kmのサイクリングタイムトライアルでスポーツブラの条件間で違いは見られませんでした。巨乳女子がハイサポートスポーツブラを着用すると胸の圧迫感と胸郭の制限がより強く感じられるにもかかわらず、運動パフォーマンスを損なうほどではありませんでした。

空気抵抗

乳房が大きいと、前傾姿勢をとったときに前面投影面積が増える可能性があり、わずかに空気抵抗が増えることがあります。ただし、この差は身体全体のサイズやフォーム、ウェアによる影響に比べれば小さいです。

エアロスーツやしっかりしたスポーツブラで身体に密着させることで影響を最小限にできます。

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