おまたカイロとは
女性器の温熱療法は、いっぱんに「おまたカイロ」といいます。おまたカイロは、膣温活、子宮温活、まんこカイロなどと呼ばれることもあります。
おまたカイロは、デリケートゾーンと呼ばれる女性の外陰部(あそこ)を下から温めることによって下腹部の冷えを取る健康法です。女性の下腹部の冷えを原因とする体調不良や、生理(月経)による不調を改善する効果があると言われています。冷え性改善だけでなくリラックス効果や美肌効果も期待できます。
特に、秋~冬~春の下半身が冷える時期に外で活動しなければならない場合に効果があります(後述)。
- 講義、仕事、買い物、イベント
- スキー等のウィンタースポーツ
- ゴルフ場、体育館等の寒い場所でのスポーツ
- 子どものスポーツ教室等の付き添い
おまたカイロのやり方
外陰部をカイロなどを用いて下から温めます。外陰部に直接カイロを貼ることはできないので布などで包みます。
- タオルハンカチを股間にはさむ方法
- 布ナプキンで固定する方法
- おまた専用カイロを貼り付ける方法(後述)
タオルハンカチを股間にはさむ方法
タオル生地のタオルハンカチ(ハンカチタオルともいう)を使用する方法は、生理時に紙ナプキンやタンポンを使用する場合など、布ナプキンを使わすに簡単におまたカイロを実践することができます。
まず、タオルハンカチと使い捨てのミニカイロを1つずつ用意します(Figure 1)。カイロは通常のサイズより小さい「ミニサイズ」を使わないと、おまたカイロが落ちることがあります。
次に、カイロをタオルハンカチで包みます。このとき3等分で包み、カイロが露出しないようにします。
それを、生理用ナプキンのようにショーツ(パンティ)の中に入れるか(Figure 2a)、またはショーツとスパッツ等の間に挟みます(Figure 2b)。位置を移動することができるので、確実に外陰部全体をカバーするように調節します。股間が熱くなりすぎた場合はタオルハンカチを重ねるかまたは、尻や仙骨にずらします(仙骨カイロ、後述)。
毛糸パンツなどの厚手のインナーの外側に、直接「はるタイプ」のミニカイロを貼りつける方法もあります。この場合、カイロが落ちないように重ね履きで固定することをおすすめします。
余裕のあるズボンの場合やショーツを脱ぐときに、おまたカイロが落ちることがあるので、ぴったりとしたパンツで重ね履きで挟んで固定することをおすすめします。
布ナプキンで固定する方法
生理時に布ナプキンを使用する場合や、生理でない日は布ナプキンを用いる方法が便利です(Figure 3a)。
まず、布ナプキンと「はるタイプ」のミニカイロを各1つずつ用意します。布ナプキンは、おりもの用の小型布ナプキンまたはひし形の布ライナーがよいです。
布ナプキンにカイロを貼り付け、さらに、それをショーツのクロッチ部分(デリケートゾーン)に巻き付け、スナップボタンで留めることによってショーツに固定します(Figure 3b)。布ナプキンで固定することにより落ちる可能性はなくなりますが、熱くなった際に尻や仙骨にずらすことはできません。
なお、布ナプキンは経血による汚れが無ければ、ネットに入れて洗濯機で洗濯することが可能です。
使用するミニカイロの種類
使い捨てカイロ
おまたカイロにしようするミニカイロは、使い捨てカイロでよいです。ただし、温度の調整が難しいので低温やけどに注意します(後述)。肌に直接貼るのはやめましょう。
貼るタイプのカイロは場所を固定するので、もともと低めの温度に設定してあります。マグマタイプを使ってはいけません。
貼らないタイプのカイロはすぐに温かくなりますが、高温になることがあるので、位置をずらしながら使用します。貼らないカイロであれば「低温タイプ」と明記されているものがおすすめです。靴用や靴下用のカイロは高温になりすぎるので使ってはいけません。
おまた専用カイロ
通常の使い捨てカイロは肌に直接貼ったり、肌に直接触れる状態で固定してはいけないので、ショーツの内側に固定することはできません。
しかし、最近は生理用ナプキンと同様に、ショーツのクロッチ部分(デリケートゾーン)の内側に貼り付けて使用するタイプの「おまたカイロ専用」のカイロが発売されています。おまたカイロ専用のカイロは下着に貼るだけなので簡単です。
おまたカイロの効果
冷え性対策
おまたカイロは、外陰部(Figure 4)を下から温めます。直接カイロを貼り付けることはできませんが、おなかや腰を温めるより早く内臓に熱を伝えることができます。
- おなか:脂肪があるため内臓に熱が通りにくい
- おまた:粘膜を通して内臓に熱が通りやすい
大陰唇の間の割れ目(陰裂)を広げたときに見える尿道や膣を直接温めるだけでなく、その後ろの会陰部や肛門も温めます(Figure 5a~d)。これらには粘膜があり、粘膜と血管を温めることによってその上の内臓へしっかりと熱を伝えることができます(Figure 5A~C)。
血管が集中しているので下腹部を中心に全身の血行が良くなり、冷え性の改善につながります。特に、会陰部の鼠径動脈を温めることにより脚に熱が伝わり、半身浴をしているかのような癒し効果があります。体内の温度が上がることで新陳代謝が上がり、ダイエット、免疫力向上、むくみ解消、自律神経バランスの改善が期待できます。
尿道~膀胱、膣~子宮、肛門~直腸を温めることにより、それぞれ泌尿器、生殖器、消化器への効果が期待できます(Table 1)。また、会陰部(Figure 5d)は、下腹部のツボでもあるため温熱刺激により女性特有の不調に効果があるとされています。
膀胱(頻尿)
女性の尿道は約3~4cmと短く、ダイレクトに膀胱(ぼうこう)を温めることができます。
下半身が冷えるとトイレが近くなります。さらに自律神経のバランスが乱れると膀胱が過敏になって、尿が十分にたまっていないのに膀胱が収縮する過活動膀胱(頻尿)となります。おまたカイロにより尿道~膀胱を温めることによって排尿の回数を減らすことができます。
子宮と卵巣(生理、女性ホルモン)
生理に関する不調は女性アスリートによく起こり、女性アスリートの三主徴の一つです。
通常の状態(膣が縮んでいる状態)では、膣口から子宮口まで約8~10cmであり、膣を温めることにより子宮の下半分も加熱されます。生理痛や生理不順など、子宮の血行不良による症状が改善されます。また、卵巣の血流が良くなり、女性ホルモンのバランスが改善されます。
- 生理痛、生理不順、無月経、過多月経
- 生理日以外の子宮の収縮による腹痛
- 子宮筋腫、子宮内膜症
血流が良くなることによりホルモンが全身に運ばるようになります。おまたカイロによりホルモンバランスが良くなり、精神症状が改善されます。
- 月経前症候群(PMS)
- 更年期障害
- 過敏性腸症候群(IBS)
- イライラ、ホットフラッシュ、のぼせ、うつ、無気力、不眠、情緒不安定
膣内フローラの改善
腟内は、善玉菌(デーデルライン桿菌)によって常に弱酸性に保たれ、有害な悪玉菌の侵入と増殖を防いでいます(自浄作用)。女性ホルモンのバランスの乱れなどにより善玉菌の働きが低下すると、膣内の酸性度が下がることで悪玉菌が増殖し、膣内環境(膣内フローラ)が悪化します。膣の自浄作用が低下するので、さまざまな感染症を引き起こします。
- 外陰部の異臭、おりものの異常
- 腟カンジダ、外陰部のかゆみ
- 子宮内膜炎、卵管炎
妊活、性生活
おまたカイロで女性生殖器全体を温めることにより、妊活を始めるうえで妊娠に適した健康な身体になります。
- 膣、子宮、卵巣、卵管の血流が良くなり、活動が活発になり、妊娠しやすくなる。
- 膣分泌液により膣から子宮へ向かう精子の動きを助ける。
- 子宮内膜が厚くなり、受精卵が着床しやすくなる。
また、陰核(クリトリス)、膣(ヴァギナ)、子宮膣部(ポルチオ)の血流を増加させることで、性的刺激に対して性的感度が高まります。温まった状態でセックスやオナニーをすると性的興奮が増し、絶頂(オーガズム)に達しやすくなります。
さらに、腟壁の毛細血管が拡張して、愛液の分泌量が増えて濡れやすくなります。膣の弾力が増してくるため、男性の陰茎(ペニス)やバイブレータなどの性具を挿入しやすくなります。
腸(便秘、肌荒れ)
腸が冷えると腸の動きが悪くなるので、便秘につながります。肛門を通じて腸を温めることによって排便を促す収縮運動が活発になり、便秘が解消されます。
また、腸の動きが悪くなると悪玉菌が優勢となり、毒素やガスを発生させます。毒素は肌にダメージを与え、肌荒れやニキビの原因となるため、おまたカイロにより美肌効果が期待できます。
効果には個人差があります
温かさを感じない場合
おまたカイロの効果には個人差があり、使ってすぐに効果が出る場合と温かさを感じない場合が有ります。全身が暖かくならないからといってすぐに温度を上げようとしてはいけません。直接、女性器や肛門、下腹部を触ってみて温かければ正常です。
身体が冷えきっている場合、冷え性がひどい場合はすぐに効果が出るわけではありません。身体の不調が改善されて、血流が良くなるまでに時間がかかります。また、生理は「月」単位なので、生理痛の症状が改善されるのに数か月かかることがあります。
熱さを感じた場合(仙骨カイロ)
じんわり温かい(ぬるい)という温度を超えて、熱いと感じたら温度が高すぎるので、温度を調節するか、または仙骨(せんこつ)に移動します。また、生理中でおまたカイロができない場合も仙骨にカイロを貼ります。はるタイプのカイロを仙骨に貼る場合は肌着の外側に貼ります。
低温やけどに関する注意事項
おまたカイロは体温より高い温度で長時間接触するため、温度が高すぎる場合、「低温やけど」を起こすことがあります。接触部の温度が44度だと約6時間で受傷し、より高温になると短時間でも受傷します。まず、カイロの基本的な使い方を守りましょう。
- 肌に接触することが許されているものを除いて、肌に直接貼ってはいけません。衣服に貼った場合でも位置をずらすようにします。
- ショーツ用ではない使いすてカイロを直接、薄手のショーツに貼ってはいけません。
- 熱すぎると感じたらすぐにはずします。赤くなったら外して冷やします。
- 就寝中に使うと、熱がこもり、温度が高すぎる場合がありますので使用を避けます。
- カイロを使用しながらホットカーペット、ストーブなどの暖房器具と併用すると、温度が高すぎる場合があります。
デリケートゾーンはデリケートなゾーンなので、高温にならないように頻繁に確認します。
- トイレで脱いだら赤くなっていないことを確認します。
- 熱くなりそうになったら我慢せずに、すぐにカイロを布で包むか、パンティライナー、おりものシート、布ナプキンを挟んで温度を下げます。
- 靴用や靴下用のカイロは高温になりすぎるので、デリケートゾーンに絶対に使ってはいけません。
- おまたカイロをつけたまま長時間座ると、圧迫されて低温やけどになります。
- ショーツに貼るとショーツの生地を痛める可能性があります。
- 貼るタイプのカイロで端が固いものは股に擦れて痛いので注意します。