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ノーブラで走ると下半身のケガの危険性が高いとの研究結果【ノーブランニング物理学】

おっぱい(胸)の大きい女性が走ると胸が激しく揺れて痛くなることは巨乳女子自身の体験談として語られることが多いです。イギリスやオーストラリアでは、巨乳女子のランニング研究が高度に進んでおり、「ノーブラで走ると下半身の負傷リスクが高まる」ことはすでに科学的に証明されています。

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概要

イギリス、ポーツマス大学准教授ジェニー・ルイーズ・バーベッジ博士Dr Jenny Louise Burbage、結婚前の旧姓:White [Jennifer Louise White]、Figure 13)の研究グループは、特に胸の大きい女性(Dカップ以上の巨乳女子)がノーブラ、通常のブラ、2種類のスポーツブラ(圧縮型、カプセル型)でランニング運動をする実験をしました。

実験の結果、ランナーがブラジャーを着用していないとき、胸の揺れが著しく増加することにより、身体全体が揺れるとともに、着地時の衝撃がより重くなり、足の内側の衝撃力が増加することが分かりました。ノーブラまたは乳房のサポート力の不十分なブラジャーの場合、女性のランニングフォームに影響を及ぼし、生理学的悪影響と精神的ストレスを与える可能性があるとのことです。

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Figure 1 : ジェニー・バーベッジ博士(Dr Jenny Louise Burbage)Credit: University of Portsmouth
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Figure 2 : バストの計測をしているスポーツ科学者ジェニー・ホワイト(Jenny White、旧姓)Credit: Belfast Telegraph https://www.belfasttelegraph.co.uk/life/women-make-a-boob-with-bra-sizes/28723122.html

さらに、おっぱいと全身の揺れによってランニング自体が困難になり、ストレスを起因とするケガを引き起こす可能性があります。この研究は、人間工学の国際研究論文集「Contemporary Sport, Leisure and Ergonomics」(2009年出版)に掲載されました。 

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参考リンク

The effect of breast support on kinetics during overground running performance(地上走行パフォーマンスにおける胸部サポートの運動学的影響)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19401901/
White JL, Scurr JC, Smith NA. The effect of breast support on kinetics during overground running performance. Ergonomics. 2009 Apr;52(4):492-8.

ジェニー・バーベッジ博士(University of Portsmouth)
https://www.port.ac.uk/about-us/structure-and-governance/our-people/our-staff/jenny-burbage

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Figure 3 : 被験者にマーカーを着けるバーベッジ博士

研究の要旨

研究の前提となる知識

スポーツブラには主に2種類のタイプがあります。圧縮型は小さめの乳房(Aカップ、Bカップ)の女性に効果的と考えられていますが、大きめの乳房(Cカップ以上)の女性はより多くのサポートを必要とする場合があり、カプセル型の方が効果的であるとする研究があります。

  • 圧縮型(コンプレッションブラ、Figure 4)乳房を平らにし、乳房の重さを胸全体に均等に分散させる
  • カプセル型(エンカプレーションブラ、Figure 5)左右の乳房をそれぞれ独立したカップ(パッド)で支える

スポーツブラは呼吸を妨げるほどきつく締め付けるべきではありませんが、乳房の動きを抑えるためしっかりとフィットする必要があります。

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Figure 4 : 圧縮型スポーツブラの例。ShockAbsorberマルチスポーツサポートノンパッドブラ
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Figure 5 : カプセル型スポーツブラの例。ShockAbsorberノンワイヤーレーサーバックエンカプレーションHigh Supportブラ

調査方法

18~40歳のDカップの女性8名がこの実験に参加しました。拡張期血圧が60~90mmHg、週1回以上有酸素運動を実施し、妊娠しておらず、過去1年間に出産または授乳しておらず、過去に乳房手術を受けていないことが確認されました。

ノーブラ、通常のブラ、圧縮型、カプセル型のスポーツブラで5回のランニング運動(走行速度10.8km/h)をし、5回の試行の平均値を求めました(Figure 67)。

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Figure 6 : ノーブラの女子アスリートの例(美女アスリート全裸大運動会2021写真集)。
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Figure 7 : 通常のブラの例。この実験ではMarks & Spencer社製アンダーワイヤー・パッド入りシームレスTシャツブラが使用された。

走行中は、3Dフォースプレート(3D force platform)を踏み、3方向の床反力を計測しました(Figure 8)。

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Figure 8 : 3成分センサーを搭載した3Dフォースプレートの例。この実験ではスイスKistler社製3Dフォースプレートが使用された。

反射マーカーを鎖骨(乳首の真上)、乳首(ブラジャーを着用している場合はその上)、上前腸骨棘ASIS: anterior superior iliac spines)に装着しました(Figure 9)。

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Figure 9 : マーカーの位置(イメージ)

マーカーの絶対位置(mm単位)と時間のデータはMicrosoft Excelにエクスポートされました。身体の動きを排除(固定)して右乳首の移動量を独立して把握するため、左右の鎖骨とASISのマーカーを用いて、グローバル座標系を右鎖骨を原点とするローカル座標系に変換しました。

簡単に言えば、右鎖骨を基準として右乳首の相対位置(空間座標)をExcelで計算したということです(Figure 10)。これによってクーパー靭帯(Cooper’s ligaments)が引っ張られるベクトル量が分かります。

乳首の垂直方向、内外方向、前後方向の移動データは平均化され、足の最大垂直方向、内外方向、前後方向の衝撃力、平均荷重速度、力積(力と時間の積)は、体重で正規化(normalised)されました。さらに、各参加者からフィードバックを取得し、快適性や痛みのレベルを測定しました。

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Figure 10 : マーカーの位置と右鎖骨を原点とするローカル座標系のイメージ

調査結果

乳房変位(移動量)

Dカップの被験者が胸を露出させてランニングした際の乳房の変位の平均値は11cmでした。

分析の結果、ノーブラでの走行と比較して、通常のブラジャー着用条件では乳房の動きが41.3%減少し、圧縮スポーツブラとカプセル化スポーツブラは乳房の動きをそれぞれ56.6%と56.4%有意に減少させることが分かりました。これにより、乳房サポート条件(ノーブラ、通常のブラ、スポーツブラ)が変位に有意な影響を与えることが示されました。

また、乳房の前後方向、左右方向、垂直方向の変位にもそれぞれかなりの有意差が認められました。2つのスポーツブラ着用条件(圧縮型、カプセル型)の間では有意差がありませんでした。

巨乳女子は、スポーツブラのタイプにかかわらず、スポーツブラを着用するのが乳房の移動量を最も減らす効果があることが科学的に証明されました。

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乳房衝撃力

左右方向(内外方向)

右足の内側にかかる最大衝撃力は、ノーブラ状態(体重の0.15倍)はコンプレッションスポーツブラ着用時(体重の0.12倍)と比較して有意に大きくなることが分かりました。

この増加した内方向の力は、ノーブラ状態ではコンプレッションスポーツブラ着用時と比較して、左右方向の乳房変位が有意に大きかったことで説明できます。サポートがない状態で左右方向の乳房変位が大きくなることで、足と地面の間に生じるモーメントが大きくなったことが、足接地時に測定された有意に大きい内方向の力につながった可能性があります。

これまでの研究によって、足の内外方向(回内・回外、pronationsupination)に生じる衝撃や繰り返し荷重は、膝関節内反モーメントを増加させ、下半身の筋骨格系への負担を大きくすることが知られています。乳房露出状態での走行中に有意に大きな衝撃が見られたことは、不適切な乳房サポートが巨乳女子のランニング運動に影響を与え、巨乳女子の負傷リスクが高まる可能性があることを示唆しています。

運動パフォーマンスを向上させるためには、ブラジャーの設計において、左右方向の乳房の変位(横揺れ)の低減により重点を置く必要があります。

ノーブラで走行した時の乳房の動き。激しく横揺れしていることが分かる。

垂直方向

足にかかる最大瞬間垂直衝撃力は有意ではないものの、ノーブラで走った場合が最も低くなりました。

垂直方向の変位が大きかったにもかかわらず、衝撃力が低かったのは、被験者が痛みを我慢するために膝を曲げて衝撃を吸収し、大きな力を減衰させようとしたことによる可能性があります。これは、乳房の動きと不快感を軽減しようとする試みである可能性があり、快適性スコアに反映されています。

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快適性評価

胸の横揺れが著しく増加すると、足に伝わる衝撃力と胸の痛みを減らすために歩幅も変化します。乳房のサポートが不十分な場合、運動能力や乳房の動きに変化が生じ、女性の運動パフォーマンスや不快感に影響を与える可能性があります。

快適性スコアはリッカート尺度Likert scale、1=快適、5=不快、10=痛み)を用いて定量的に収集されました。参加者から得られた平均快適性スコアは、圧縮スポーツブラが最も快適であることが明らかになったのに対し、ノーブラでは不快(5)と痛み(10)の間となりました。

衝撃力が大きいほど、被験者のストレス強度が高いことを示し、身体への負荷が増加するだけでなく、長期的にはストレス関連傷害の発生につながる可能性もあります。

以上の結果から、女性(特に巨乳女子)が運動中にスポーツブラを着用することは、胸の上下動だけでなく左右動も効果的に抑制し、快適性の向上という点で正当であることが示されました。

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補足

以下、当サイトによる補足です。

2013年博士論文

バーベッジ博士(旧姓ホワイト)は、前述の論文を大学院生の時に発表し、2013年に最終的に博士学位論文としてまとめました。この一連の研究成果により博士号を取得しました。

巨乳女子はスポーツブラのうち、ハイサポートタイプのブラはローサポートより乳房の揺れが少なく、下肢の影響が少ないことが分かったので、高い乳房サポートのブラを着用しないとパフォーマンスが低下する可能性があると結論付けました。

参考リンク

Breast support implications for female recreational athletes(女性レクリエーションアスリートにおける乳房サポートの影響)
https://puretest.port.ac.uk/en/studentTheses/breast-support-implications-for-female-recreational-athletes
Jennifer Louise White (Author). Jul 2013 University of Portsmouth Student thesis: Doctoral Thesis(博士論文)

運動の第3法則(作用・反作用の法則)

ニュートンの運動第3法則(Newton’s third law)は作用・反作用の法則law of action and reaction)とも呼ばれ、一方の物体が他方へ力を及ぼすときには、必ずその反作用が存在するという法則です。

床を踏むときにかかる3次元の力を計測することによって、床から足に及ぼす3次元の衝撃力(床反力)を計測することができます。

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日本は数十年単位で遅れている

海外では1980年(昭和55年)以降の研究により、特に胸の大きい女性はスポーツ関連の乳房痛をより頻繁に経験すること、そして、スポーツブラの着用により乳房の移動が抑えられ、乳房の痛みが軽減されることが報告されました。適切なスポーツブラは女性の自信を高め、運動パフォーマンスを向上させるのに役立つことが分かり、2000年頃までには巨乳か貧乳かを問わず、スポーツブラの使用が強く推奨されました。

しかし、日本では現在でも、海外と比較してスポーツブラの研究が極めて遅れており、スポーツブラの学校教育も意識も低レベルの「後進国」と言えます。

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The authors have no conflicts of interest directly relevant to the content of this article.