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スポーツブラのアンダーを緩めると呼吸が改善し運動の効率が向上するとの研究結果

多くの女性は試着室で安静時の感覚でスポーツブラを選ぶため、適切な乳房(おっぱい)のサポートを求めて「きついブラジャー」を選ぶ傾向があります。しかし、締め付けが強すぎるスポーツブラは肺を圧迫し、呼吸と運動パフォーマンスに悪影響を与える可能性があります。

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概要

カナダのブリティッシュコロンビア大学のシャラヤ・キップ博士Shalaya Kipp、1990年8月19日-、Figure 1)らの研究グループは、アンダーバストのバンドがきついスポーツブラ(スポブラ、Sports Bras)がランナ​​ーの呼吸を妨げるかどうかを検証しました。

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Figure 1 : シャラヤ・キップ博士(Shalaya Kipp)Credit: United States Olympic & Paralympic Committee

その結果、きつすぎる場合、呼吸頻度が上がる一方で1回あたりの換気量は減少し、酸素消費量が増加することが分かりました。

この研究は2024年6月に「Medicine & Science in Sports & Exercise」誌に掲載され、newsweek等でも報道されました。 

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参考リンク

Sports Bra Restriction on Respiratory Mechanics during Exercise(スポーツブラは運動中の呼吸メカニクスを制限する)
https://www.researchgate.net/publication/378205556_Sports_Bra_Restriction_on_Respiratory_Mechanics_during_Exercise
https://journals.lww.com/acsm-msse/fulltext/2024/06000/sports_bra_restriction_on_respiratory_mechanics.18.aspx
Kipp S, Leahy MG, Sheel AW. Med Sci Sports Exerc. 2024 Jun 1;56(6):1168-1176

Sports Bras Have Unexpected Negative Effect on Workouts(スポーツブラが「予期せぬ悪影響」を与える可能性【最新研究】)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2024/08/post-1059.php

研究の要旨

前提となる基本知識

間違ったサイズのスポーツブラを着用すると、運動パフォーマンスが低下する可能性があり、80%近くの女性が間違った着用をしているという研究結果があります(Figure 2)。

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Figure 2 : ブラ紐(ストラップ)が浮いているとみられる女子選手の例。

女性は上気道が狭く、息切れを感じやすいなどの要因により、運動中に呼吸が制限されることがあり、ブラジャーのアンダーバンドできつく締め付けられると、呼吸がさらに制限される可能性があります。しかし、胸が動かず、上半身をあまり使わないサイクリングではスポーツブラの締め付けが呼吸機能に影響しないことが、最近の研究により分かっています。

そこで、ランニングの場合は胸の動きが大きくなり、アンダーバンドの締め付けと相まって呼吸困難が大きくなる?との仮説をもとに実験が行われました。

調査方法

国内および国際レベルで中長距離の競技に出場するベテラン女子陸上選手9名が実験に参加しました。

参加者は好みのブラジャーのサイズを自分で選択しました。着用したブラは圧縮スポーツブラ(コンプレッション)を実験用に改造したものであり、ブラジャーを外さずにアンダーバンドの圧力を調整するため、背面に5段階のホックが付いています。ホックを(A)きつめ(B)自己選択(C)ゆるめの3段階に変えてランニングを行いました(Figure 3)。

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Figure 3 : 論文掲載画像。背面の5段階のホック。(B)のホックで快適だと思うブラサイズを自分で選択した。

スポーツブラには左側に小さなポーチが縫い付けられており、ここにバルーンカテーテルを挿入して、運動中に連続的にアンダーバンドの圧力を測定しました(Figure 4)。さらに、ランニング中の呼吸ごとに肺にかかる内圧を測定するため、参加者全員の鼻腔および咽頭に局所麻酔薬(2%リドカイン)を塗布したうえで、カテーテルを鼻腔から食道へ挿入しました。

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Figure 4 : 論文掲載画像。実験に使用したスポーツブラには、乳房下のアンダーバンドの内側に持続圧力測定バルーンカテーテルを挿入できるようになっている。

調査結果

実験は2日間に分けて行われ、最大と中程度の強度のランニングを行いました。

最大運動

参加者は、8~9mph(12.9~14.5km/h)の間で開始し、2分ごとに0.5mph(0.8km/h)ずつ増加しました。参加者が10mph(16.1km/h)に達したら、傾斜を1分ごとに1%ずつ増加させ、疲労するまで続けました。

きつめのブラでは、ゆるめのブラと比較して有意に高い運動エネルギーが認められ、換気量がきつめのブラの方がゆるめのブラよりも有意に5%高くなりました。

きつめのブラでは、ゆるめのブラと比較して1回あたりの換気量が有意に低かったにもかかわらず、より高い呼吸頻度によって、高い血流が達成されました。また、きつめのブラでは、ゆるめのブラと比較して、有意に高い呼吸仕事量が観察されました。

  • きつめのブラでは有意に呼吸量、呼吸頻度が多い
  • きつめのブラでは1回あたりの換気量が有意に低い
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(イメージ)

中程度の運動

参加者は、水平(傾斜0%)で9.9mph(16.0km/h)の速度で5分間のランニングを6回行いました。ランニングの間には5分間の休憩が与えられました。

スポーツ ブラのアンダーバンドの圧力を高めると、呼吸仕事量が大幅に増加しました。呼吸頻度が増加し、一回換気量が減少しました。アンダーバンドの圧力をゆるめのブラに変えると、酸素摂取量が減少しました。

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(イメージ)

ゆるめのブラが不快ではない

小さすぎるブラジャーを自己選択した女性は、スポーツブラのアンダーバンドによる圧力によって呼吸機能が損なわれる可能性があります。今回の研究では、自己選択の条件ときつい条件の間で最大バンド圧力の増加は見られませんでした。これは、参加者がすでにきついブラジャーを着用していた可能性があることを示唆しています。

重要なのは、ゆるめのブラが不快であったり、ランニング中に十分な胸のサポートが得られなかったりしたと報告した女性がいなかったことです。

この結果は、アンダーバンドの圧力を緩めると、一部の女性では呼吸メカニクスと有酸素運動能力の両方が向上する可能性があることが示唆されます(Figure 5)。

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Figure 5 : 適切なブラを着用しているとみられる女子選手の例

補足

キップ博士は元オリンピック選手

この研究論文の筆頭著者であるキップ博士は、女子3000m障害・全米学生チャンピオンの元陸上選手です。2012年ロンドン夏季オリンピックと2013年IAAF世界陸上競技選手権にアメリカ代表として出場しました(Figure 6Figure 8)。

引退後にブリティッシュコロンビア大学で運動生理学の博士号を取得しました。

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Figure 6 : 2012年オリンピック女子3000m障害シャラヤ・キップ選手
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Figure 7 : 2013年世界陸上女子3000m障害シャラヤ・キップ選手

アンダーを緩めると酸素効率が2%向上

アンダー部分がもっともきついスポーツブラを着用した際、酸素消費量が1~2%増加し、アンダー部分を緩めることで酸素効率が2%向上し、長距離を走る際に大きな影響を与える可能性があります。

キップ博士(元陸上選手)は「3時間切り(サブスリー)の女子マラソンランナーにとって、酸素消費量が2%改善することは、3分の改善に相当します。つまりスポーツブラが全身に影響を与え、パフォーマンスに影響を与える可能性を明確に示しています」と語っています。

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Figure 8 : オリンピックアメリカ代表選考会シャラヤ・キップ選手

2025年にも同様の研究が発表された

オーストリアのザルツブルク大学スポーツ運動科学科主任研究員エリック・ハーバー博士Eric HarbourFigure 9)の研究グループは、オーストリアの陸上クラブに所属する17名のエリートジュニア女子ランナー(平均19.3歳)を対象に、3種類のアンダーバンドのきつさで疲労困憊するまでランニングマシンで走る実験をしました(Figure 10Figure 11)。

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Figure 9 : エリック・ハーバー博士(Eric Harbour)

実験の結果、アンダーバンド下の圧力が低い(緩い)状態では、横隔膜の胸郭の制限を緩和し、横隔膜疲労が軽減され、換気、呼吸パターンに好ましい変化をもたらし、運動誘発性呼吸困難を緩和することが判明しました。この研究は205年6月に「Medicine & Science in Sports & Exercise」誌に掲載されました。

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アンダーバンドの締め付け度を15%軽減するとパフォーマンス向上につながる可能性がありますが、そのままでは必要なサポート力や快適性が得られない可能性があります。

異なるバストサイズの女性を対象とした他の研究では、乳房のサポートが強ければ強いほど、ランナーに役立ち、酸素消費量の削減とランニングエコノミーの向上につながることが分かっていますので、アンダーバンドだけを過度に締め付けるのではなく、「ブラ全体」で胸をサポートするのが重要と言えます。

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Figure 10 : 論文掲載画像。光電容積脈波法(PPG、脈波センサを使って光学的に心拍数や血圧などを計測)を使用した実験の様子。
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Figure 11 : 論文掲載画像。ブラジャーのアンダーバンドの下に圧力プレートを取り付けて圧力を測定した実験の様子。
参考リンク

Sports bra tightness affects respiratory muscle fatigue, breathing pattern, and perceptual responses during running(スポーツブラの締め付けは、呼吸筋の疲労、呼吸パターン、ランニング中の知覚反応に影響を与える)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40581946/
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02640414.2025.2526277
Harbour E, Farlock R, Marko D, Bahenský P, Schwameder H. J Sports Sci. 2025 Sep;43(17):1871-1884.

適切なブラであれば影響しないとの研究

他の研究では、ハイサポートスポーツブラ装着時に「呼吸がやや制限される感覚」はあったものの、生理学的な呼吸機能への影響は著しくなかったとされます。

つまり、ハイサポートブラであっても、サイズやアンダーのフィッティングが正しく、ブラの圧力が適切であれば、呼吸への影響はありません。

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適切なブラを着けていない女子の例
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The authors have no conflicts of interest directly relevant to the content of this article.