女子用陸上ショーツがハイレグ形状(脚の付け根が深くカットされているデザイン)になっているのは、単に見た目や流行ではなく、運動機能性・快適性・競技特性を最大化するための機能的な設計です。女子の身体にぴったりフィットするショーツは、女子選手が最高のパフォーマンスを発揮するために欠かせません。

レッグホールのデザイン
レッグホール(leg holes of women’s track shorts)とは、陸上競技用の女子ショーツにおいて、脚を通すための開口部(足ぐり部分、leg openings)のことを指します。これは単なる開口部ではなく、競技における動きやすさ・フィット感・快適性に直結する重要な設計要素です。
女子用陸上ショーツのレッグホールは、通常タイトフィットに設計されています。これにより、ショーツが体にぴったりとフィットし、動きやすくなります。レッグホールがきつすぎず、適切なフィット感を持つことで、ショーツがずれたり、動作に干渉したりするのを防ぎます。
- 高いカットライン(ハイレグデザイン):レッグホールの形が脚に沿っていることで、空気抵抗を減らす効果も期待できます。これは、余分な布が風を受けにくくし、より速い動きをサポートします。
- 低いカットライン(標準的なデザイン):レッグホールが広く、布の面積が大きいと、空気抵抗が増加する可能性があります。

女子がハイレグである理由
脚の可動性
多くの女子用陸上ショーツ(いわゆるレーシングショーツやスプリンターショーツ)は、ハイレグカットのデザインが採用されています。これは、レッグホールが股間部分より高くカットされており、股関節周りに余計な制約を与えないようにしています。また、ヒップを持ち上げるフィット感があります。
これにより、脚を大きく動かす際にも動きやすさを保てます。ハイレグカットにより、走る、跳ぶ、屈伸する際に脚の可動域が広がり、競技パフォーマンスを向上させます。
フィット性
男子もハイカットのショーツを着用する選手はいますが、女子のほうが体格や着用感の点でフィット性やラインの安定が重要になるため、ハイレグ型がより普及しています。
女子用陸上ショーツのフィット性は、パフォーマンス、快適性、安全性、そして精神的な安定に大きく影響します。適切にフィットしたショーツは、動きやすさを提供し、筋肉や関節をサポートし、怪我を予防するだけでなく、長時間の競技でも快適に過ごせるように設計されています。陸上競技のような激しい動きを要求されるスポーツでは、フィット性が競技成績を左右する要因となります。

ハイレグでもズレずにフィットする理由
陸上女子のショーツがハイレグでありながらしっかりフィットする理由は、競技中にズレたり不快感を与えないよう、骨盤の構造と臀部の立体感に合わせて作られており、ズレにくく、動きやすく、快適にフィットするよう工夫されています。ハイレグカットやストレッチ素材、通気性、そして動きに合わせた設計が重要な要素です。

女子用ショーツの技術的な工夫
女性用の陸上ショーツのハイレグ部分は、骨盤の丸みや股関節の角度に沿うように立体的に裁断されています。女性用モデルでは、特に骨盤の広さ・臀部の丸みにフィットするパターンが設計されているため、履いたときにずれにくく、しっかり収まります。骨格の構造・筋肉の丸み・可動域に合わせて立体的にデザインされています。これは男性用ショーツとは大きく異なるポイントであり、快適さやパフォーマンスに直結します。
骨盤の広さに対応する横幅
女性は男性に比べて骨盤の幅が横に広く、標準的な(男女兼用の)ショーツでは合わないことが多く、女性専用設計が必要になります。女性用陸上ショーツは、ウエストとヒップのバランスに合わせ、ショーツは横に広めの台形パターンで設計されています。
骨盤の横幅に合わせたウエスト〜ヒップラインまでを包み込む緩やかな横広がりのカーブを持つパターンが採用され、骨盤に沿って安定して乗るように配置され、ズレや締め付けを防止しています。

骨盤の前傾
女性は骨盤が前傾しやすく、前に傾くことによって前側の生地が余り、浮いてしまいます。そのため、前屈時や走行中も前側が浮かないように前側を浅めにカッティングしています。
逆に、お尻の割れ目の上が一部出てしまうことがあります。しゃがんだり走ったりしても、お尻が出にくい構造にするため、後ろ丈を深めに設計し、背中側はしっかりカバーして、骨盤上部(仙骨)にまでショーツがかかることでズレを防いでいます。前は浅く、後ろは深い「前下がり・後ろ上がり」の設計が基本であり、この上下差によって、腰からヒップ全体が包まれるような安心感と安定性が得られます。

臀部の丸みに沿う立体裁断
女性の臀部は、男性に比べてお尻の脂肪と筋肉の厚みがあり、ボリューム(丸み)が強いのが特徴です。それに合わせてショーツの後ろ身頃(ヒップ側の布)の縦の長さ(尻ぐり)を多めに取り、後ろ中央(センターバック)をやや長めにして、丸みを持たせた縫製にしています。
後ろ身頃にダーツ処理(布のたわみ調整)または立体切替ライン(パネル分け)が入り、左右の布がヒップの丸みを自然に包み込むように布を配置しています。適切にフィットしたショーツは、骨盤や臀部周りを安定させることで、姿勢の維持や体幹の安定に寄与します。これにより、競技中のパフォーマンス向上が期待できます。

脚の付け根の角度が異なる
陸上競技では、太ももを高く上げたり脚を大きく前後に振る動作(特に短距離・跳躍)が求められます。ショーツがフィットしていないと、余分な生地が動きに干渉したり、ずれたりして、動きが制限される可能性があります。反対に、フィット感のあるショーツは、自由な動きを確保し、パフォーマンスを最大化します。
ハイレグ形状により股関節の可動域を最大限に確保され、脚の上げ下げがスムーズになります。
男性と女性では股関節の位置と脚の付け根の角度(Q角)が異なるため、ハイレグの「脚ぐりライン」も女性用は股関節の可動域や角度に合わせて緩やかなカーブを描いた脚ぐりラインになっています。

クロッチ部の安定性確保
下方向のフィット感が甘いと、クロッチ(股間の縫い合わせ部分)が前後にズレやすく、快適性を損ねる可能性があります。特に女子用ショーツではクロッチ位置の保持が非常に重要で、上下方向の適切なテンションで安定させる必要があります。

高伸縮・高弾力素材を使用
多くの陸上ショーツには、ポリウレタン(スパンデックス・ライクラなど)を含むストレッチ性の高い素材が使用されており、レッグホールも伸縮性があります。これにより、脚の動きに合わせてショーツが伸びたり縮んだりするため、より自然な動きをサポートします。素材の柔軟性により、運動中の快適さとフィット感が保たれ、脚の動きを妨げることなく自由に使えます。
これらの素材は、女子の身体にピタッと密着し、激しい動きでもズレにくく、体型の変化に柔軟に対応し、垂直方向に伸縮することで、上下の動きにも柔軟に追従するため、より自然で快適なフィット感を提供します。
また、伸びたあとに元の形にしっかり戻ることで「ずり下がり」や「食い込み」を防ぎます。

インナー内蔵でホールド力を強化
ほとんどの競技用ハイレグショーツには、内部にメッシュ素材などのインナーパンツが縫い付けられており、二重構造になっています。このインナーがショーツの位置を安定させ、ズレや食い込みを抑える効果があります。一体型で体に密着するため、余計な締め付けや不快感が少なくなります。
フィット感が過剰だと締め付けが強くなり、血流が悪くなる可能性があります。逆にフィット感が不十分だと、ショーツが動きについていけず、ストレスを感じることがあります。適切なフィット感は、適度な圧迫感を与えつつも快適に着用できる状態を保ちます。
ウエストと太ももの滑り止め
ウエストゴム部分は幅広く、ソフトにフィットしながらしっかりと固定。太もも周辺には伸縮バイアスやシリコンストッパー素材が使われることもあり、ショーツが上にずり上がるのを防ぎます。
女子用陸上ショーツのレッグホール部分は、摩擦や肌への負担を軽減するために、フラットロック縫製やシームレス構造が採用されていることが多いです。これにより、縫い目による擦れを防ぎ、快適さが向上します。
ステッチが目立たず平らになることで、肌への摩擦を軽減し、競技中に生じる不快感を減らすことができます。

パターン数が多く、サイズごとに微調整
同じ「Mサイズ」でも、S・M・L だけでなく、ウエスト細め/ヒップ大きめなどの体型に対応するため、細かくパターン設計を変えるメーカーも存在しています。これにより、「お尻だけきつい」「ウエストだけ緩い」といったズレを防止しています。
精神的な安定につながる
自信の向上
快適でフィット感のあるショーツを着用していると、選手は自分の動きに集中でき、精神的に安定します。逆に、ショーツがずれたり、締め付けが強すぎたりすると、不安を感じ、パフォーマンスに悪影響を与える可能性があります。快適でフィットしたユニフォームを着ることで、自信を持って競技に臨むことができます。
陸上など激しい動きのある競技では、ショーツが上下にズレると集中を妨げたり、動きの妨げになります。フィット感が良ければ、身体にピタッと吸い付くように安定して動かず、パフォーマンスに集中できます。

シルエットと美しさの維持
ウェアがずれていると見た目にも乱れ、競技用ユニフォームとしての美しさが損なわれます。上下にピタッと吸い付くようなフィットがあれば、身体のラインを自然にきれいに見せることができます。
レッグホールの形状やカットのデザインは、視覚的にも重要な要素です。スポーティーでスタイリッシュなデザインが多く、ラインやカラーを工夫することで、競技用ユニフォームとしての一体感を持たせます。見た目の美しさやシンプルさも重要で、ファッション性を兼ね備えたショーツとして、競技時に自信を持って着用できます。

筋肉の安定
陸上競技では、脚や腰の筋肉に強い負荷がかかります。女子用ショーツは、特に骨盤や腰回りの筋肉をサポートする役割も担っています。
適切にフィットしたショーツは、筋肉にかかる負担を均等に分散し、筋肉や関節への不必要なストレス、疲労の蓄積を軽減する効果があります。これにより、怪我を未然に防ぐことができます。
