女子の陸上競技では、身体的・心理的に違和感がないなら、肌の露出が多いスタイルはパフォーマンス面で有利と考えられています。特に短距離・跳躍系など、記録を最大限に追求する競技では布面積が少なく通気性・動きやすさを重視したレーシングショーツが基本です。

肌の露出が多い理由
陸上女子の肌の露出は、速さ・動きやすさ・快適さを追求した結果です。女子の陸上競技において、競技特性や動きやすさ、快適性を考慮すると、スパッツ(タイツ)よりもレーシングショーツの方が適している場面も多くあります。
しかし、用途や選手の好みによってスパッツを使い分けることもあります。

パフォーマンス向上のため
パフォーマンスを最大限に引き出すためにも、布面積の少なさは大きなメリットになります。
空気抵抗の軽減
短距離走や跳躍競技では、わずかな空気抵抗もタイムに影響します。100m、200m、走幅跳などでは、数百分の1秒の差が勝敗を分けます。肌を出すことで布のバタつきや抵抗を減らすことができます。特に太腿や腹部などの露出は、スタートやダッシュ時の加速に有利です。
女子の皮膚は衣服より滑らかで、空気抵抗が少ないのに対し、スパッツで脚全体を覆うと、布面積が多く、空気抵抗が増える場合があります。
脚の筋肉の可動域
ショーツは、素材が少ない分、体にフィットしやすく、スパッツに比べて脚を大きく動かす際に自由度が高いため、特に走る、跳ぶ、投げるなどの動きに適しています。ショーツは足の動きを制限することなく、素早く脚を広げたり縮めたりすることができ、動きの自由度が向上します。

競技中にダッシュやジャンプをする際には、ショーツの方が軽快で反応が早く、筋肉の収縮や伸展を邪魔しないため、より良いパフォーマンスを発揮できます。
陸上競技のなかでも、特に短距離走や跳躍競技、投擲競技では、特に足の動きが大きく、迅速であることが求められます。ショーツはこれらの競技動作に対して、動きやすいカットとフィット感を提供するため、動作の妨げになることなく、スムーズに行動できます。
一方、スパッツは筋肉を包み込むようなデザインが多いため、走る際に筋肉の可動域を若干制限することがあります。特にスパッツのフィット感がきつい場合、動きにくさを感じることもあります。

股関節、膝関節の自由度
脚の振り出し、跳躍の際、布が引っかかると股関節や膝の自由な動きを妨げる場合があります。
スパッツは足全体を覆うため、特に股関節の可動域や膝の屈伸動作において、締め付けや圧迫を感じることがあります。これにより、特に短距離走や跳躍競技では動きが若干制限されることがあり、反応速度やパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。
ハイレグショーツは太腿や股関節の動きを妨げません。さらに、ショーツは足のラインやヒップをより自由に動かせるため、動きに合わせて自分の体を最大限に活用することが可能です。

疲労の軽減のため
過度な圧迫感
スパッツは、足や臀部、ウエスト部分にしっかりとフィットする設計が多いため、特に高いフィット感を求めたタイプでは筋肉を圧迫し、血行が悪くなることがあります。長時間着用すると筋肉の疲労を早める原因となり、特に長距離走や持久力を必要とする競技では疲労感を感じやすくなる可能性があります。
適切な圧迫が筋肉のサポートには有効な場合もありますが、過度の圧迫は逆効果になることがあります。圧迫感は、パフォーマンスに支障をきたすだけでなく、長時間の競技や練習中に体調不良を引き起こす原因にもなります。

摩擦による不快感
長時間の競技中やランニング時に、スパッツと肌が擦れることで、特に太もも部分に摩擦によるかぶれや擦り傷が生じることがあります。これは特にスパッツが少し大きめで緩い場合や、素材が滑りにくい場合に起こりやすいです。
このような摩擦は競技に集中できなくなり、またケガの原因にもなり得ます。
軽量化
限られたエネルギーで効率よく走るには、着用するものもできる限り軽くする必要があります。
ショーツはそのデザインから、スパッツよりも軽量であり、動きやすさや速さをサポートします。特に陸上競技においては、軽さが重要な要素であり、少しでも余分な重量を取り除くことで、走りやすさやパフォーマンスに直結します。薄くて小さいウェアは女子陸上選手の疲労の軽減につながります。

体温調節のため
陸上は屋外での競技が多く、夏場は熱中症リスクも高いので、特に女子用ショーツで脚の露出を多くすることで放熱・通気性を確保し、汗の乾きも早めることができます。
発汗効率、放熱効率が良い
炎天下での長時間待機・走行で、放熱効率が良いショーツは集中力維持に役立ちます。
スパッツは体全体を覆うため、体温を保持しやすい反面、体温調節が難しい場合があります。特に暑い環境下や、高い運動強度で競技を行う場合、スパッツによって熱がこもりやすくなることがあり、熱中症や体温の上昇を引き起こすリスクがあります。
冬季の競技では保温性を高めることができますが、夏場や暑い場所では不快感を感じやすく、パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。

通気性
ショーツはその構造上、脚の部分が露出しているため、通気性が良いです。特に暑い時期や長時間の競技中に、汗をかきやすい部分が開放されていることにより、湿気がこもりにくく、快適さを保つことができます。
特に鼠径部や陰部、内ももなど蒸れやすい場所での不快感軽減に効果的です。
一方、スパッツは、全身を包み込む形状のため、通気性が悪くなりやすいです。特に湿度が高い環境や暑い季節には、汗がたまりやすく、蒸れが起こることがあります。これにより、不快感や皮膚トラブル(かぶれや湿疹など)が発生する可能性があります。
速乾性
ショーツは速乾性の高い素材で作られていることが多く、汗や水分が素早く蒸発し、快適さを長時間保ちます。
一部のレーシングショーツは、鼠径部付近に通気性の高いメッシュ素材や、吸汗速乾性に優れたポリエステル系の素材が入っていて、縫い目の位置や太さに配慮し、摩擦を減らして蒸れにくい構造になっています。

スパッツはショーツに比べて通気性が悪く、湿気がこもりやすいため、長時間の競技中に不快感を感じやすいことがあります。
脚の付け根(鼠径部)のケアのため
鼠径部(そけいぶ)は、お腹と太ももの境目にあたる部分(脚の付け根)を指します。鼠径部は、血管やリンパ節が多く集まる場所で、皮膚が薄く汗をかきやすく、蒸れやすい場所です。

激しい運動で大量の汗が出るため、通気性が悪いと動きにくさや不快感も生じ、競技パフォーマンスに影響します。高機能なレーシングショーツには鼠径部にメッシュ素材を使っているものが多く、適度な締め付けで血行を妨げず、汗がこもらないようにしています。
女子選手の鼠径部は蒸れが続くと肌トラブル(かぶれ、かゆみ、臭い)の原因になり、女性器の細菌・真菌感染のリスクが高まります。運動後はこまめに鼠径部や女性器周辺の汗を拭き取り、清潔を保つようにします。

メンタル面のメリット
開放感がある
ショーツはデザインが比較的シンプルであり、選手にとって心理的に開放感をもたらしやすいです。
特に中・長距離や夏場の試合では開放感と涼しさがあり、「レーシングショーツのほうが気持ちが乗る」「動きやすく感じる」などの心理的な快適さがあります。
スパッツは窮屈に感じることがあるため、心理的にリラックスしづらいと感じることもあります。

着脱の速さとトイレの利便性
ショーツはスムーズに着脱できることから、試合前後の素早い切り替えに対応できます。スパッツは簡単に脱ぐことができないため、特に競技間で素早く準備を整えなければならない場合に不便を感じさせることがあります。

また、女子選手は下半身の構造上、トイレの際には必ず脱がなければなりません。ショーツの場合は競技中に素早くトイレに行って脱ぐことができます。トイレをスムーズに済ませることは女子選手の競技パフォーマンスにとって重要です。
スパッツを着用すると密着しているので蒸れやすく体に張りつくため、トイレに行く際に脱ぎにくいことがあります。特に競技前後の準備や休憩中に短時間でトイレを済ませたい場合、スパッツはそのまま着脱しにくく、時間を取られることがあります。

デザインの多様性
ショーツはデザインが豊富で、選手の体型や個々の好みに合わせた選択が可能です。陸上競技用のショーツは、機能性を保ちながらも、見た目にも工夫が凝らされており、選手が自分に合ったものを選びやすいという点で有利です。

デメリット
最近の高機能コンプレッションスパッツは、空気抵抗を抑えつつ筋肉をサポートし、パフォーマンスアップに役立つものもあります。長距離やトレーニング用にはスパッツのほうが向く場合も多いです。
気温や天候の影響
布面積が減ると、肌の露出が増え、紫外線や外的刺激から肌を守る力は弱まります。
ショーツは露出部分が多いため、特に寒冷地・強風・雨天など冷えやすい環境では、体温調節が難しくなることがあります。冷たい風や寒さにさらされることで、体温が下がり、筋肉が硬くなりやすくなります。

露出と生理
ショーツは脚の部分が大きく開かれているため、体型や筋肉のラインが目立ちやすく、特に体型に自信がない選手や、見た目に敏感な選手にとっては、自分の身体を露出させることに不安を感じることがあります。
また、生理中にショーツを着用すると、経血の漏れが気になる場合があります。特に、走る、跳ぶなどの動きが激しい競技では、ショーツの下に着けた生理用品が動きに伴ってずれたり、圧迫されたりすることがあるため、不安を感じやすいです。

ただし、有観客の陸上競技場において、いちいち見た目を気にして競技に集中できないようなメンタルでは、陸上競技では戦えないと思われます。