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胸の大きい女性(巨乳女子)は貧乳より汗をかきにくいとの逆説的な研究結果

バストが大きい女性(巨乳)は振動による運動量が大きく、汗をかく量が増えると長らく信じられてきましたが、この仮説は2024年の研究により科学的に否定されました。正しくは、胸の大きな女性ほど「発汗量が少ないのに」汗がこもりやすく蒸れやすい、というのが事実です。

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概要

イギリス、サウサンプトン大学健康科学部の博士課程に在籍する大学院生ハンナ・ブラント氏Hannah BlountFigure 1)らの研究グループが2024年(令和6年)に発表した研究によると、暑い環境でランニングをした女性の胸部の汗の量を調べたところ、乳房表面積の増加に伴い、胸部の汗腺の密度と汗の量が減少することが分かりました。

つまり、おっぱいの大きい女性(巨乳)は胸の汗が少ないということです。

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Figure 1 : ハンナ・ブラント修士・研究員(Hannah Blount)Credit: University of Southampton

これは、思春期の乳房成長期に女性の乳房の皮膚が伸びるにつれて、乳房の成長の程度に比例して、汗腺の密度が局所的に低下することが原因ではないかと考えられています。今回の実験では、乳房の大きさによって汗腺1つが出す汗の量が変わらないことも判明しました。この事実はニューヨーク・ポストNew York Post)でも報道され、話題となりました。

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乳房表面積と汗の量の複雑な関係を解明したこの研究成果は、女性特有のスポーツ時の衣類、特に胸の大きい巨乳女子のスポーツブラ(スポブラ、Sports Bras)の設計、デザイン、評価方法に影響を与える可能性があります。この研究の論文は2024年8月に「Experimental Physiology」誌に掲載されました。

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参考リンク

The effect of female breast surface area on heat-activated sweat gland density and output(女性の胸部表面積が熱活性化汗腺の密度と分泌量に与える影響)
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/EP091850
Blount H, Valenza A, Ward J, Caggiari S, Worsley PR, Filingeri D. Exp Physiol. 2024 Aug;109(8):1330-1340.

Your bra size affects how much you sweat — and women with bigger busts sweat less: study(ブラジャーのサイズは発汗量に影響し、バストが大きい女性は発汗量が少ないという研究結果)New York Post
https://nypost.com/2024/06/19/health/women-with-bigger-busts-sweat-less-study-finds/

研究の要旨

前提となる知識

人間は2歳までに皮膚に200万~500万個程度の汗腺が形成されますが、2歳を過ぎるとそれ以降、汗腺の数はほとんど変化しないため、身体的成長による皮膚の拡張に伴い、汗腺の密度が減少するということが、1950年代の複数の研究により判明しています。

これを踏まえて、この研究では、女性の乳房が成長するほど(=おっぱいが大きい人ほど)胸の汗腺密度や汗の量が減少するのではないか?との仮説をもとに調査されました。

調査方法

被験者は、身体的に活発な22人の女性で、S、M、L、XLの4つのブラジャーサイズカテゴリーごとに5~6人の女性を募集しました(年齢:27.7±9.6歳、体重:72.2±12.7kg、身長:170.4±4.8cm)。水分補給を確実にするため、実験開始の2時間前に500mLの水を飲むよう指示されました(Figure 2)。

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Figure 2 : この研究グループではもともと、女子アスリートの身体の持つ体温調節機能の研究をしている。Credit: University of Southampton

まず、参加者はプライバシーカーテン越しに完全に服を脱ぐように指示され、精密体重計(精度0.005kg)で乾燥体重を測定しました(Figure 3)。

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Figure 3 : カーテンの裏で全裸になる女性(イメージ)。全裸になるのは体重計測の時だけである。

次に、室温32±0.6°C、湿度53±1.7%に設定された気候制御室で、ランニングマシンを使ってランニングを行いました。ランニング中はランニングショーツ、スポーツブラ、各自のトレーニングシューズとソックスを着用しました。

そして、走行開始から45分後プライバシーカーテンの後ろに回り、もう一度完全に服を脱いで全裸で運動後の体重を測定するように求められました(Figure 4)。全身発汗量(WBSL)は、運動前後の体重の差として算出されました。

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Figure 4 : 実際のランニング中の様子。Credit: University of Southampton

乳房表面積(BrSA)の算出方法

この研究において、乳房表面積BrSA: Breast Surface Area)は、室温約23°C、湿度約50%の実験室で安静時に測定されました。参加者は、乳房が胴体から自由に垂れ下がるような4点伏臥位4-point prone position、詳しくは後述)をとり、乳房の皮膚表面全体を白色光スキャナーを使用してスキャンし、表面積を算出しました。

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Figure 5 : 乳房のスキャンに使用された3Dハンディスキャナ Credit:Shining 3D https://www.einscan.com/einscan-h/

局所発汗量(LSR)等の算出方法

女子アスリートの全身の部位ごとの発汗量は、イギリス、ラフバラー大学(Loughborough UniversitySmith & Havenith,2012)の2012年の研究によって詳細に測定されています。

この研究によると、女子アスリートの乳房の局所発汗量(LSR: Local Sweat Rates)は、ブラ三角Bra TriangleFigure 6、詳しくは後述)が最も発汗量が多く、両乳(breast)との差が大きいことが判明しました。

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Figure 6 : 論文掲載画像の一部で、女性の発汗を数値化した図。ブラ三角(Bra Triangle)は、乳房の谷間の下部にある三角形のエリアのことであり、胴体前面の中で汗の量が最も多い。
参考リンク

Body mapping of sweating patterns in athletes: a sex comparison(アスリートの発汗パターンのボディマッピング:男女比較)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22811031/
Smith CJ, Havenith G. Med Sci Sports Exerc. 2012 Dec;44(12):2350-61.

この研究を踏まえて、乳輪上端から3cm上、乳輪下端から3cm下、ブラ三角の3箇所(Figure 7)に、3cm x 3cmの吸収材パッチを貼って、汗の吸収量を0.1mg単位で計測しました。吸収パッドを外した直後に、ヨウ素紙を用いて熱活性化汗腺密度を測定し、LSRと汗腺密度から汗腺あたりの発汗量を算出しました。

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Figure 7 : 論文掲載画像を基に作成。ヨウ素紙を5秒間貼り付けそれを拡大して画像認識で汗腺の数をカウントする。

調査結果

ブラ三角の発汗は同じ

過去の研究のとおり、ブラ三角Bra Triangle)は、両乳(breast)よりも汗腺密度が高く、発汗量が多いことが改めて確認されました。

しかし、ブラ三角について、乳房表面積(=おっぱいの大きさ)と発汗量の間には有意な関係は認められませんでした(統計学上の有意差なし)。つまり、ブラ三角の部分は胸が成長しても皮膚があまり伸びないので、胸が大きくても小さくても、汗の量は変わらないということです。

胸が大きいほど汗腺密度が低い

ブラ三角以外の、乳房表面に存在する単位面積あたりの汗腺の数(汗腺密度、個/cm2)については、乳房表面積(=おっぱいの大きさ)と統計的に有意な相関係数r=–0.76と強い負の関係がありました。つまり、健康な若年~中年女性でおっぱいが大きいほど、乳房表面上の汗腺密度は直線的に減少することが判明しました。

  • 最も胸の小さい女性:約71個/cm2(最大値)
  • 最も胸の大きい女性:約10個/cm2(最小値)

最も小さな胸の女性(BrSA=約168cm2)の胸部上の汗腺密度が、ブラ三角で測定された密度よりもわずかに低いだけであったのに対し、最も大きな胸の女性(BrSA=約561cm2)の汗腺密度は、これまで全身で報告された最も低い汗腺密度値に近いことを示しました。

汗腺1つの汗の量は胸の大きさに依存しない

乳房表面積(=おっぱいの大きさ)が大きくても小さくても、汗腺1つが出す汗の量は乳房全体およびブラ三角のどちらにおいても、有意な関係は見つかりませんでした(統計学上の有意差なし)。

つまり、胸が大きくても小さくても、胸の汗腺1つあたりの発汗量はほとんど変わらない(後述)ため、つまり「胸が大きい人は汗腺が少ない」ために全体的に発汗が少なくなります。

胸が大きいほど胸の発汗量が少ない

乳房表面からの局所発汗速度(mg・cm2/min)に関しては、乳房表面積(=おっぱいの大きさ)と統計的に有意な負の相関(相関係数r=–0.62)が認められました。つまり、健康な若年~中年女性でおっぱいが大きいほど、乳房表面の発汗は直線的に減少することが判明しました。

  • 胸が大きいほど乳房表面(Breast)の発汗量が少ない
  • ブラ三角(Bra Triangle)の汗の量は変わらない

補足

以下、当サイトによる補足です。

4点伏臥位

乳房表面積を算出するために、乳房が胴体から自由に垂れ下がるような4点伏臥位4-point prone position such that the breasts could freely hang away)の体勢で乳房をスキャンしたとされています。この体位について詳細は不明ですが、スキャンに使用された機器がハンディタイプであることと下乳もスキャンをする必要があることから、おそらくベッドの上で四つん這いになってスキャンしたと思われます(Figure 8Figure 9)。

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Figure 8 : 乳房が垂れ下がる4点伏臥位のイメージ。
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Figure 9 : 医学的には、乳房を出した状態でうつ伏せになる乳がん検査MRI専用のベッド(Breast MRI)がある。

ブラ三角

ブラ三角Bra Triangle)」は日本でも海外でも一般的な用語ではありません(検索しても出てきません)。

ブラジャーの前の真ん中の部分のことを正式には「前中心Center Gore)」といいます。特にカップのあるブラ(内側に寄せずに下から支えるタイプのブラ)の裏側を見ると、前中心に三角形の布地があることが分かります(Figure 10Figure 11)。脂肪組織が少なく骨と皮膚が近く、皮膚がブラの生地で覆われているので、汗が多く溜まりやすくなります。

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Figure 10 : U字ワイヤーブラの裏側。アンダーバンドとカップの間に三角形の布地があることが分かる。Credit:ワコール(ジュニア専用ワイヤーブラ)
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Figure 11 : 「ブラ三角」のあるノンワイヤーブラの着用例(イメージ)

ブラ三角は、両乳の谷間の下にあって、両乳の下端の曲線(バージスラインBurgess line)とアンダーバンドのラインとで囲まれる三角形の領域を指します(Figure 12)。汗が溜まりやすい特殊なゾーンとして、胸部とは別に測定した部位であり、研究者が勝手につけた名称です。

なお、三角形のブラ(トライアングル・ブラ、Figure 13)とは関係ありません。

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Figure 12 : 黄金の正三角形とブラ三角の位置関係。
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Figure 13 : 三角形の形をしたブラは「Triangle Bra(トライアングル・ブラ)」と呼ばれる。

汗腺1つあたりの汗の量

汗腺1つの出す汗の量は身体の部位によって異なります(全身すべて同じという意味ではありません)が、乳房の汗腺については巨乳と貧乳の間に有意差がなかった、つまり、「胸の汗に限って言えば、おっぱいの大きさによる差はなかった」という意味です。

胸の汗が少ないのに多く感じる理由

この研究が示すとおり、「巨乳=汗をかきやすい」というイメージは正しくなく、胸が大きいほど乳房の汗腺密度と胸の発汗量は少なく、巨乳女子のほうが汗をかきにくいです。これは科学的事実です。

しかし、現実には、胸が大きいと皮膚の重なりや密着部に汗がこもりやすく、谷間に流れるような汗をかいているように見えます。巨乳女子が汗の不快感を強く感じるのは、複数の要因が考えられます(Figure 14)。

  • 巨乳は空気の流れ(対流)の悪い箇所ができやすく、湿度が上がり汗が蒸発しにくい。
  • 汗が少ないのは乳房本体であり、ブラ三角の部分の発汗はおっぱいの大きさに関係なく同じなので、ブラ三角から出た汗が下乳に溜まる。
  • 肩、鎖骨、上胸の汗が谷間に流れ込む。
  • 胸の揺れを防ぐために必要以上にきついブラをつけている。
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Figure 14 : (A)貧乳女子は胸全体の通気性を重視する。(B)巨乳女子は乳房ではなく下乳や谷間の通気性を重視する。
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The authors have no conflicts of interest directly relevant to the content of this article.