身体の保護

女子スポーツ用の股関節サポートショーツ(パンツ)について【骨盤の保護2】

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股関節は左右に1つずつある

股関節(こかんせつ、hip joint)は、骨盤と大腿骨をつなぐ最も大きな関節で、左右に1つずつあります(Figure 1)。

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Figure 1 : [左]女性の骨格の模式図(2008年、ベルンハルト・ウンゲラー「3D Female Skeleton Anatomy」)。[右]女子の仙骨上部の断面と股関節(1887年、イギリスの外科医ルーサー・ホールデン「人骨学」)。

下半身の動作にかかわる最も重要な関節であり、股関節がねじれることにより上半身を安定させることができます。姿勢を変えると左右の股関節が動き、骨盤の傾きを微妙に変えることによって重心が安定します。特に、野球やゴルフなど腰の回転を使うスポーツでは、股関節がスムーズに回転することが重要となります。

股関節に障害が起こると、尻、脚、腰、ひざに負担がかかり下半身全体の故障につながります。そして痛い脚をかばって不安定な歩き方になりさらに悪化します。最悪の場合はスポーツどころか歩行することも困難になります。

股関節サポートショーツの例

特に女子は股関節が変形しやすいため(詳しくは後述)、衣服やサポーターなどで股関節を保護しながらスポーツをするように心がけましょう。

CW-X股関節サポートショーツ

CW-X股関節サポートショーツ(株式会社ワコール)は、両脇から股関節をサポートするととともに、前後から骨盤をサポートし、球技・陸上等、さまざまなスポーツにおすすめです。接着技術で、サポートラインの縫い目をなくし、肌ざわりが良いです。

McDavid女性用コンプレッションショーツ

マクダビッド(McDavid)ウィメンズコンプレッションショーツM707W(ユナイテッドスポーツブランズジャパン株式会社)は、女性特有の骨盤形状を考慮し、股関節部にスムーズな脚の動きを生み出すダイヤモンドカットを採用し、適度なコンプレッションで疲労を軽減する、ミドルサポートタイプの女性用コンプレッションショーツです。優れた伸縮性・運動追随性・フィット性があります。 

股関節スパッツ

理学療法士が考えた「股関節スパッツ」(サンスマイル)は、履くだけで股関節をサポートし、動きやすくする女性用スパッツです。日常生活の中で、立ったり座ったりする運動を股関節からサポート。また、スパッツに施されたテーピングラインは股関節周りの重要な筋肉をサポートします。

骨盤サポートショーツ

骨盤全体を支えるショーツもあります。

股間と股関節の違い

股間股関節では全く違います。

股関節は奥深くにある

股関節は、骨盤の斜め下にあり、恥骨の外側にあります(Figure 2)。

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Figure 2 : 股関節の靭帯の模式図(1909年、ドイツの解剖学者ヨハネス・ソボッタ「人体解剖のアトラスと教科書」)。

股関節は脚の付け根にあり、前から見るとパンツ(ショーツ)のラインの真ん中付近にあります(Figure 3a)。股関節は大腿骨の上端であり、横から見ると身体の中心部、太ももの内部(奥深く)にあります(Figure 3b)。腰を触ると骨盤のでっぱりがあり、太ももを触ると大腿骨のでっぱりがあることが分かりますが、股関節は直接触ることができないくらい奥深くにあります。

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Figure 3 : 股関節のおおよその場所を表した模式図。股関節は身体の中心にあり、大転子(大腿骨のでっぱり)の奥にあるため、体表からは場所が分かりにくい。

股間とは

股間(こかん、delicate zone)は、外性器とその周辺部のことで、パンツ(ショーツ)のクロッチによっておおわれる部分です。ただし、外性器のほかに、会陰部や陰毛の部分も含めることがあります。

股下から見た場合、骨盤の下開口部(空洞)に囲まれた場所が、股間と呼ばれる部分です。これに対して、股関節は股間の外(産道の外側)にあります(Figure 4)。

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Figure 4 : 女子の骨盤を股下から見た解剖図(1918年、イギリスの解剖学者ヘンリー・グレイ「人体の解剖学」骨盤の下開口部の縦横の長さを計測した図)に、実際の身体の画像をおおよその位置で重ねた模式図。胎児が通過する場所が股間、その外側にあるのが股関節である。

股関節の構造とケガ

股関節の構造

大腿骨の先端(大腿骨頭、だいたいこっとう)はボール状になっていて、骨盤の凹んでいる部分(寛骨臼、かんこつきゅう)がそれを受けている構造となっています(Figure 5)。骨の接続部分は軟骨(水分やコラーゲン)でおおわれており、ボールがなめらかに動くことによって、脚の角度を自由に変えることができます。

大腿骨頭と寛骨臼はゴムのような靭帯で強固に連結されているため、激しく動いても容易には外れないようになっています(Figure 2)。脚を動かすと骨盤も連動します。

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Figure 5 : 10歳女児の骨盤のレントゲン写真。

変形性股関節症

変形性股関節症coxarthrose)は、股関節に過度な負担がかかり軟骨部分がすり減って変性し、股関節が変形する病気です。関節部分が炎症を起こし痛みを生じ、股関節が動かなくなります。腰や膝が痛くなり、運動時に同じ場所が痛くなった場合、変形性股関節症の前兆の可能性があります。

女子の股関節と脚の特徴

女子の脚は横についている

女子の骨盤(特に恥骨)は出産しやすくするため、男子より横に広がっています。そのため、女子の大腿骨は男子と比較して外側(横)についています(Figure 6)。男子は骨盤をしっかりと下から支えているのに対し、女子は斜め下から支えています。

このような構造であるため、女子の骨盤の傾きは不安定となります。骨盤が前後に自由に傾くので、意図的に股間を前に突き出すことも、尻を後ろに突き出すことも可能です(骨盤の角度と腰の反り方を変えることで前にも後ろにも放尿することが可能である)。このように前後左右にぐらぐらする構造なので、スポーツで下半身を固定するには男子以上の筋力が必要となります。

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Figure 6 : 成人女子の骨盤のレントゲン写真。

女子の脚は内側に曲がっている

女子の脚は股関節が外側にあるため、太ももが斜めになります。膝より下は真下に伸びるので、内股になります(Figure 7)。膝にまっすぐ力が入らないことが膝への大きな負担となるため、女子アスリートは膝を故障することが多くなります。

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Figure 7 : 女性の骨格の模式図(1901年、ドイツの医学博士アンナ・フィッシャー・デュッケルマン「家庭医としての女性」)。

女子の股関節はもともと骨折しやすい

股関節の障害は新生児から幼児期にかけて日本人の女児に多く見られます。男児よりも女児のほうが圧倒的に多いです。それは女子の遺伝子の影響により生まれつき股関節が弱くできているからです。股関節脱臼や形成不全は悪化すると歩けなくなりますから、少しでも痛みを感じたらすぐに病院で股関節の状態を調べてもらいましょう。

  • 先天性股関節脱臼:生まれつき骨盤と大腿骨がはずれている
  • 寛骨臼形成不全:寛骨臼(受け皿)が浅くて小さいために大腿骨頭を受けることができない

また、成人女子は男子と比べて股関節のかみ合わせが浅く、股関節の骨折が多く発生します。一説によると、女子の股関節骨折のリスクは男子の約3倍あると言われています。

股関節唇(寛骨臼の端に付着しているリング状の軟骨、Figure 6)の損傷はスポーツの衝撃が原因で生じることがあります。注射やリハビリだけで改善しない場合は手術も行われることがあります。スポーツ復帰には数か月かかることもあります。

また、大腿骨頭が骨折したり股関節を脱臼することもあります。折れた骨片や脱臼した骨が周囲の神経を損傷し、脚の麻痺を引き起こす可能性があります。神経の損傷の状態によっては麻痺が回復せず歩行が困難となる場合もあります。

股関節のサポートの必要性

股関節の動きをサポートするショーツ(パンツ)などを着用すると、股関節の可動が良くなりスポーツのパフォーマンスが向上します。

  • 股関節の動く角度と範囲が広がる(可動性)
  • 衝撃を吸収しながら連続して動ける(下半身の安定性)
  • 全身のブレがなくなり体幹が強化される(上半身の安定性)

股関節の動く角度と範囲が広がる(可動性)

スポーツでのパフォーマンスを向上させるには股関節が柔軟に動くことが大事です。股関節の動く角度と範囲(可動域)が広いと身体が大きく動きます。例えば、ランニングやウォーキングではストライド(歩幅)が大きくなり、速く動くことができます。身体の重心は股関節の近くにあり、股関節周辺の筋肉によって股関節がスムーズに動くことによって、重心の移動が容易となり大きな力を発揮することができます。身体が大きく動くことは消費カロリーのアップにつながります。

スポーツをすると日常生活にはない身体の動かし方をすることがあります。股関節の可動域が広いと多様な動きに対応することができます。また、疲労が少なくなります。

股関節の可動域が狭いと急な動きに対応できず、他の関節でその動きを補おうとします。そして、身体全体に無理な負担がかかり、ケガにつながります。

衝撃を吸収しながら連続して動ける(下半身の安定性)

素早く運動をすると、地面から股関節に大きな衝撃が伝わります。また、止まるときにも衝撃が伝わります。

スポーツで素早く移動するには、膝の曲げ伸ばしより股関節を大きく高速に動かすことが重要です。股関節を大きく高速に動かすと下半身のバランスが崩れます。それでも、衝撃を吸収し、片足立ちでも両足立ちでも安定し、しっかり止まれることが大事です。

股関節が不安定になると、止まるときの衝撃に耐えられず転んでしまい、次の動作に移行することができません。股関節に過度な負担がかかるだけでなく、股関節の可動範囲を超え、骨折や脱臼などのケガにつながります。

全身のブレがなくなり体幹が強化される(上半身の安定性)

股関節が安定すると、骨盤も安定し、上半身も安定します。股関節が不安定になると全身が不安定になり、余計なエネルギーを使うため疲労します。スポーツのパフォーマンスも低下し、関節にかかる負担も大きくなります。

また、股関節がブレると、下半身のパワーが逃げてしまい上半身にうまく伝わらなくなります。全身を使うスポーツでは股関節の安定が重要となります。