骨盤は身体全体を支える
骨盤(こつばん)は下腹部にあり、身体の真ん中にあります(Figure 1a)。背骨(脊柱)と連結することによって上半身を支えるだけでなく、大腿骨と連結して下半身の動きを制御する重要な骨です(Figure 1b)。
また、女性生殖器(子宮、卵巣、卵管、膣)や小腸、大腸、膀胱などたくさんの重要な臓器を守っています。骨盤を温めることによって、女性生殖器の機能が向上し女性ホルモンのバランスが良くなります。女性の場合、生理、妊娠、出産、ストレスなどの心理的な側面に関連して骨盤の痛みを感じることがあります。
スポーツ用の骨盤ショーツの例
スポーツ用の骨盤ショーツは、スポーツパフォーマンスを上げるために骨盤を安定させ、運動しやすいという特徴があります。
整体ショーツSPORTS
「整体ショーツSPORTS」(株式会社ボディスプラウト)は、尾骨方向に締めるV字パワーネットと仙骨サポートの働きで骨盤を立て、スポーツ時の腰への負担軽減をめざします。この構造は「着用時に姿勢を意識し、腰への負担を軽減させる」として特許を取得しています(特許第6902388号)。
スポーツ時に快適に着用していただけるように、アクティブな動きをさまたげない、ほどよいサポート感と通気性の良い生地にこだわっています。
スリムウォーク for Sports
「スリムウォーク for Sports」(ピップ株式会社)は、骨盤サポート+お腹凸凹押さえのWシェイプ設計で、太ももからお尻の筋肉の動きに負荷をかけて、消費カロリーUPで脂肪燃焼サポート。スポーツ時に快適な素材(吸汗速乾糸、消臭繊維)を使用しています。薄型設計でアウターにひびきにくいです。
ライザップRIZAPインナーパンツ
「ライザップRIZAPインナーパンツ」(グンゼ株式会社、RIZAPグループ株式会社)は、グンゼとライザップ(RIZAP)の提携により企画生産したものです。腹部と腰部分に伸びにくい素材を使用しており、シェイプさせたまましっかり固定します。一部に吸水速乾性のあるメッシュ素材を使用しているので汗を素早く乾かしムレを防ぎます。
股関節サポートのショーツ
骨盤を支えるショーツのほか、股関節の動きをサポートするショーツもあります。
正しい骨盤の傾き
骨盤は、正面に対して左右が水平で、どちらかが上や前に出ていない位置が正しいです(Figure 2)。骨盤の位置や傾きがずれると身体全体のバランスが崩れ、関連している筋肉の負担のバランスも崩れます。そして、筋肉のコリや痛み、疲れにつながります。
また、横から見ると少し前に傾いています(Figure 3b)。後ろに倒れると上半身を正しく支えることができません(Figure 3a)。ただし、骨盤が前に倒れすぎるのも腰を痛める原因となるので注意が必要です(Figure 3c)。
骨盤の性差
女子の骨盤は横に広がっている
骨盤は、全身の骨格の中で最も性差の大きい骨です。出産の際、胎児は母親の骨盤を通って外に出ます。そのため、女子の骨盤は広く開いています(Figure 4)。
出産の際に胎児を通しやすくするため、骨盤開口部(骨盤の穴)は大きく、内臓がぎりぎり下に落ちない大きさになっています(Figure 5a)。骨盤開口部が完全な円形の空洞でなければ、胎児が骨に引っかかって難産または帝王切開になる傾向があると言われています。骨盤の背中側にある仙骨は女子のほうが幅が広く、短いです。
洗面器とバケツ
本来は、骨盤は中にある内臓が動かないように支えるものであるため、男子のように狭くて深いバケツのような形状のほうが重心が安定します。重心が安定したほうが物を運んだり、速く走ったりするのに適しています(Figure 6b)。
しかし、女子の身体は妊娠の時の大きい胎児(子宮)を支えるため、広くて浅い洗面器のような形状になっています。そのため、スポーツをするときに身体の重心が安定しない構造となっています(Figure 6a)。
女子の骨盤は生殖器とともに成育する
いっぱんに、思春期(第二次性徴)になると性ホルモンの影響により心身が発達し、骨格も大きく変化します。そのため、「骨盤は思春期までは性差がない」と言われることがありますが、これはまったくの誤りです。
生殖器(子宮、卵巣、膣など)などの妊娠出産機能にかかわる身体の性差は、胎児の時に発現します(第一次性徴、性の分化)。前述のように、骨盤も妊娠出産機能にかかわる重要な骨であるため、その形状はすでに新生児のときには男女差が認められます。特に股関節の脱臼は圧倒的に女児のほうが多いことが知られています。そして、10歳ごろまで女性ホルモンの影響を受けないにもかかわらず、徐々に骨盤の形状が円形に近くなり、成人女性型に近づいていきます。つまり、女子の骨盤が男子と異なるのは基本的には、生殖器と同様に遺伝子に由来するもの(生まれつきのもの)です。
したがって、少女の段階(幼児期~小学生)で、衣服の形状が男子と異なるのは当たり前のことです。
その後、だいたい10歳から14歳までの間に初潮(初めての生理)を迎えますが、初潮の約1年前から徐々に女性ホルモンの分泌量が増え、身体全体が急速に発育していきます。それにともなって骨盤も初潮の1年前から顕著に発育し、初潮の1年後までの間に成人女性型の骨盤の形がほぼ完成すると言われています。女性生殖器が成熟するのと同時に骨盤も成熟するのです(Figure 7)。
骨盤の安定がなぜ必要か
ケガをしにくい
スポーツをすると身体のいろんな方向から力が加わりますが、骨盤が安定するとどんな体勢になってもまっすぐな姿勢を保つことできるようになります。身体の軸がぶれにくくなるのでケガをしにくくなります。
パフォーマンスの向上につながる
最近の研究では、骨盤を意図的に回転させて走るよりも骨盤を固定して走ったほうが、重心移動がスムーズになり速く走れることが分かっています。このように、骨盤がグラグラすると上半身を安定させながら次の動作に移行するために無駄なエネルギーを使ってしまうため、運動効率が悪くなります。
骨盤が安定すれば、身体を効率よく動かすことができるようになり、スポーツのパフォーマンス向上につながります。姿勢が良くなると呼吸がしやすくなるなど、筋肉や骨格以外の臓器にも効果があります。
- 無駄な動きが無くなる(運動効率が良くなる)ので、消費エネルギーの節約になる
- 筋肉が楽に動くので、運動量が増える
- 誤った負荷がかからないので、フォームが良くなる
- 股関節が動きやすくなる
- トレーニングの効率が良くなる
女子の骨盤はゆがみやすい
骨盤は1つの骨ではなく、複数の骨(腸骨、坐骨、恥骨、仙骨、尾骨)が靭帯(じんたい)で連結して1つのかたまりになったものです。女子の骨盤は、その複数の骨が連結している箇所(関節や靭帯)が柔らかく柔軟性があり、出産時にはさらに広がりやすいような構造になっています(Figure 8)。
筋肉量も少なく不安定であるため、スポーツによる強い振動や衝撃が加わったときには、骨盤へ偏った負荷がかかりやすく、傾きやすくなります。また、生理や妊娠出産等の影響によりさらに骨盤のずれ、ゆがみ、不調を感じやすくなります。女子は男子に比べて常に骨盤が不安定な状態であることに注意して運動しなければなりません。
女子の骨盤は前傾しやすい
女子の骨盤は男子と比較して前に傾いています。そのため、成長するにつれて陰毛が生える三角部分が前に傾き(Figure 9a)、外陰部が奥に入り込み、仙骨と尻が後ろに持ち上がる女子特有の立ち方となります(Figure 9b)。女子の骨盤は前傾しやすいので、骨盤を正しく固定することで姿勢を安定させることが必要となります。
骨盤を温める効果
骨盤周辺を温めることにより、血流を良くして体調を改善することができます。